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大学院博士課程体験記 押野 智博

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大学院博士課程体験記

乳腺外科学教室

博士課程:令和2年度入学

押野智博 (おしの ともひろ)

医師の仕事は全てが繋がっている

私は、医学院博士課程(臨床医学専攻)に在籍し、人工知能(AI)を利用した造影超音波検査による腋窩リンパ節転移の予測というテーマで研究し、修了しました。このテーマへの着手は令和3年度からで、ちょうど医学AI研究が広まりつつあった時期でした。AIというテーマもゼロから触れる分野でしたし、造影超音波検査というニッチな検査がどのように組み合わさるのか、一切見通しが私の中でつかないままスタートしました。

押野智博さんの顔写真

博士課程に入学する以前・入学経緯

元々、北海道大学病院の乳腺外科に所属しておりました。臨床の経験を積んでいく過程で、臨床が基礎医学や最先端の技術に支えられて成り立っていることを実感し、医師として生き続けるためには大学院に入り医学研究に触れておくのも必要だろうという認識もあり、入学しました。とはいえ、教室や指導医の先生方のご方針によるところもあり、必ずしも100%主体的な選択ではなかったのは事実です。

入学後を振り返って

1〜2年目は当科内の実験室で、とある遺伝子の免疫染色を行っていましたが、これは様々な要因から断念となりました。2年目からAI研究を開始しました。同時に「医療AI開発者養成プログラム(CLAP)」を履修し、AI研究に関する基本を学ばせて頂きました。AI研究では深層学習のための画像を集めるため、1症例ずつ、1000例近くの症例の画像を日夜集め続け、さらに機械学習のために集めた画像の所見を1例ずつ、膨大な数を取り続ける毎日でした。論文化できるデータが出たと思ったら、今度は論文化の作業にとても苦戦しました。アクセプト頂いた雑誌では、査読期間が1年となりました。また、4年目には腫瘍病理学教室にも通わせて頂き、1年間基礎実験をさせて頂き、基礎医学を学ぶことができました。総合的に、AI研究や基礎医学を含め、多くの経験を得ることができました。

現在の医療は、創薬にしても検査技術にしても医学研究の積み重ねで成立しており、大学院で学んだことが日常診療を正しく理解するために生きていると日々実感しております。今後はAIが医療に入ってくると思われますので、AIについて学べてこれからのAI時代への備えとできたことは、一生の財産だと思っております。さらに、医学研究には非常に多くて複雑な工程があることも学びました。医学的知識を総動員して研究を立案すれば医学研究ができるわけではなく、共同研究の相談の仕方・研究費の獲得・実際の研究の進め方・倫理審査・論文の書き方など、医学研究には数えきれないほど多くの工程やルール・作法などがありました。また、特に医学研究者の方々の生活や考え方は、私も大学院に来るまではほとんど知りませんでした。主治医をいきなり一人でできないように、医学研究もとても一人で最初からできるものではないと学びました。それだけに、支えてくれる人たちのありがたみも実感し、感謝の気持ちも非常に大きいものとなりました。

これからの目標について

大学院での経験を活かしながら、北大病院や北海道がんセンターの乳腺科等で勤務し、乳癌診療に従事し患者さんの力になりたいと思っています。同時に、自施設・他施設を含め、様々な医学研究に貢献できるよう努めたいと思っております。先に述べたように、医学研究には非常に多くの業務が発生します。見方を変えれば、単に専門性が高くて業務量が多い仕事とも言えます。そしてこのような仕事を、全く分野の違う人たちと、お互いの知識や環境も鑑みながら、共同研究を進めていく必要があります。まずは、今既に多くある当科内および外部との臨床研究・トランスレーショナルリサーチが回ることに貢献し、自分や教室の同僚・教室の発展を得つつ、そのうち自分のオリジナルの研究もできたらと思っています。

入学を希望する皆さんへ

大学院修了までの過程は簡単なものではありません。しかしながら、自分自身が頑張れば、周りも快くご協力してくれることが大半です。大学院で得られる経験は医師人生の中で貴重なものになると思います。キャリアになることはもちろん、進学する皆様には多くの学びを得て頂ければ幸いです。

最後になりますが、この場を借りて、私の大学院生活で関わってくれた全ての方々へ感謝申し上げます。

腫瘍病理学教室での細胞培養実験の様子