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学会・講演会・セミナー情報

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遺伝子病制御研究所生命科学シンポジウム

2019/09/02

このたび、大栗敬幸先生(旭川医科大学准教授)と長田 重一先生(大阪大学教授)に講演をしていただくことになりました。大栗先生はがん免疫療法の発展に関して、そして長田先生は細胞死の詳細な機序の解明に関して、近年目覚しい成果を挙げられています。シンポジウムを下記のとおり開催いたしますので、是非ご参加いただけますと幸いです。 終了後、北研究棟5階セミナー室にて意見交換会を開催しますので、こちらも奮ってご参加ください。

【日時】:2019年9月13日(金) 16:00~18:00
【場所】:医学部 中棟3−1共通セミナー室

【所属】:旭川医科大学医学部 免疫病理分野
【演者1】:大栗 敬幸
【演題】:がん免疫療法の標的抗原を考える ~免疫チェックポイント阻害剤の先へ~
【要旨】:

免疫チェックポイント阻害剤が抗がん剤などの標準治療に比べてがん患者の生存を延長させることが示され、がんに対する免疫システムの有効性が一般的に信用・信頼されつつある。当初、免疫システムから見たがん細胞は自分自身の細胞であることから免疫原性が低く免疫細胞の標的になりにくいと思われていたが、実際にはがん細胞の巧みな生存戦略によって形成された免疫抑制的ながん微小環境が免疫細胞の機能を抑制しており、がん細胞そのものは変異を蓄積し正常細胞とは異なる抗原性を獲得していることが明らかになっている。つまり、免疫チェックポイント阻害剤によって免疫抑制が解除され細胞障害性T細胞が抗腫瘍活性を発揮できるようになる。こうした観点から、免疫チェックポイント阻害剤は変異の蓄積が多いがんに対してより高い治療効果が期待できると考えられており、変異したアミノ酸配列を有する新生抗原(ネオアンチジェン)ペプチドをがんワクチンとして利用する試みも行われている。それでは、変異の蓄積が少ないとされるがん種に対してはどのような治療を提供できるだろうか?

本講演では、免疫チェックポイント阻害剤単剤ではカバーできないがんに対して演者が現在研究開発中である『がんの免疫逃避機構を逆手にとった治療戦略』について課題はまだまだ山積みであるが紹介させて頂きたい。多くのご指摘をいただけると幸いである。

【所属】:大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫・生化学
【演者2】:長田 重一
【演題】:死細胞の貧食と細胞膜の非対称性 フリッパーゼとスクランブラーゼ
【要旨】:

二層からなる細胞膜を構成するリン脂質のうちフォスファチジルセリン(PtdSer) は、そのほぼすべてが、内膜に存在し、細胞がアポトーシスを起こすとその表面に暴露され、“eat me”シグナルとして作用する。また、活性化された血小板もPtdSerを暴露、血液凝固因子を活性化する。私達は細胞膜に存在するP4-ATPase ファミリーメンバーのATP11Aおよび11CがフリッパーゼとしてPtdSerを外膜から内膜へ転移させることを見出した。ATP11AやATP11C分子の中央にはカスパーゼ認識配列が存在し、アポトーシス時に切断・失活される。しかし、フリッパーゼの失活のみでは一旦形成された細胞膜の非対称性が崩壊することはない。血小板やアポトーシス細胞では10個の膜貫通領域を持つTMEM16F、Xkr8がスクランブラーゼとしてリン脂質を細胞膜の外膜と内膜の間で非特異的に移動させるPtdSerを速やかに細胞表面に暴露する。TMEM16Fは、Ca2+ によって活性化され、その遺伝子欠損はある種の血友病を引き起こす (Scott Syndrome)。一方、Xkr8はIg-super familyに属する膜タンパク質をシャペロンとして要求し、これらタンパク質とヘテロ2量体として細胞膜上に存在する。Xkr8のC−末端部位にはカスパーゼ認識配列が存在し、アポトーシス時に切断されると多量体を形成、スクランブラーゼ活性を発揮する。Xkr8を欠損したリンパ球、好中球はアポトーシス時にPtdSerを暴露できず、死細胞が体内に蓄積、マウスはSLE様の自己免疫疾患を発症する。本講演ではアポトーシス時におけるPtdSerの暴露機構、アポトーシス細胞のマクロファージによる貪食機構やその異常について紹介する。

【主催】:遺伝子病制御研究所ランチセミナー実行委員会、遺伝子病制御研究所若手支援「東市郎基金」
【後援】:共同利用・共同研究拠点「細菌やウイルスの持続性感染により発生する感染癌の先端的研究拠点」
【本件担当】:北海道大学遺伝子病制御研究所 がん制御学分野 教授 園下将大 TEL:011-706-8801 MAIL: msonoshita@igm.hokudai.ac.jp