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vol.43 脳神経外科学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
 
地域の医療を支えつつ、幅広い研究分野で世界をリード

北海道大学大学院医学院 神経病態学講座 脳神経外科学教室

教授藤村ふじむら みき専門医学系

  • 1994年、東北大学卒業、同脳神経外科入局
  • 1997年、カリフォルニア大学(UCSF) 研究員
  • 1997年〜1999年、スタンフォード大学 研究員
  • 2011年、国立病院機構仙台医療センター 脳神経外科 医長
  • 2013年、東北大学 脳神経外科 講師
  • 2014年、東北大学 脳神経外科 准教授
  • 2017年、一般財団法人広南会 広南病院 脳神経外科部長(兼) 副院長
  • 2021年1月、北海道大学 脳神経外科 教授

社会に還元できる臨床研究と100年後を見据えた基礎研究

▲ 「多様な人材を育成し、自身で世界を切り拓く力のある人や世界に発信できるリーダーとなる人材を育成することが北大の使命であると考えています」と語る藤村教授

北海道大学脳神経外科学教室は1965年、都留美都雄初代教授により開設された日本でも最も歴史の古い脳神経外科教室の一つです。藤村幹教授は2021年に第五代教授に就任。教室の伝統を継承しつつ、広範囲におよぶ脳神経外科の診療・研究・教育に取り組んでいます。
「本教室は、100年後の医療を見据えた研究と教育を行い、地域の大学として北海道全体の医療に責任を持つことが使命だと考え、研究テーマもそうした視野に立って取り組んでいます。例えば、脳卒中などの一般的な疾患ついては、従来の課題を解決する新しい治療法を研究開発し、希少性の高い難病に関しては北大の持つ総合力を駆使して謎の解明や治療法の開発に挑む。さらに、最新のテクノロジーやICTを用いて社会的な側面から診断や治療の高度化を目指すなど、さまざまな角度からアプローチしていくことが、本教室の目指す方向性です」と藤村教授。

中でも注目を集めているのが、脳梗塞に対する再生医療の研究開発です。本研究室では、2001年より脳梗塞で重度の麻痺が生じた患者さんに対し、患者自身の骨髄から製造した自家骨髄間質細胞(Bone Marrow Stromal Cell: BMSC)を用いた研究[1]を進め、2017年から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実用化研究事業の支援のもと、第1相医師主導治験「脳梗塞急性期患者を対象とした自家BMSC脳内投与による再生治療の安全性及び有効性を検討する第I相試験」(研究開発代表者:寳金 清博 総長)を行いました。 「第I相試験では、自家骨髄間質細胞を脳に直接投与する特殊な手法を用いて、障害された脳組織を再生させる治療法の安全性・有効性を調べました。その結果、重度の麻痺を有する脳梗塞患者さんに脳内投与が安全に行えることや身体機能が回復するなどの成果を得ました。第I相試験は2021年4月にすべて終了し、今後は2029年の実用化を目指した研究と治験を進める計画です」

指定難病に関しては、小児、若年成人の脳卒中の原因であるもやもや病の研究を行っています。臨床研究では治療成績向上に直結するテーマを中心に研究を推進。また、有効な治療法がないのが現状である重症例に対し、細胞移植療法の応用について基礎研究を推進しています。
脳卒中を対象としたICT医療連携では、ICT医療アプリJOIN(アルム社)を用いた急性期脳卒中の早期診断、医療連携をすでに実臨床で活用。2022年には脳卒中・循環器病ICT医療連携研究部門(寄付研究部門)を設立し、北海道における遠隔医療、働き方改革、AI診断など幅広い領域への応用を念頭に臨床研究を推進しています。

多様な人材がそれぞれの能力を発揮する研究教育環境

▲ 産学連携を含めた他分野との協力体制で先端的な研究を推進している脳神経外科学教室

幅広い分野で研究を行っている本教室は、数多くの研究グループを有し、所属メンバーも多様性に富んでいます。藤村教授は「難しい外科手術を行う高度な技術を持った医師はもちろん、科学的思考に基づいて様々な課題に柔軟にアプローチできる研究者や、世界に向けてリーダーシップを発揮できる人材、企業との共同研究で窓口になる能力に長けた人材など、さまざまな能力や適性を持つ人材が活躍しています。最近は、限られた予算やスケジュールの中で効率的に研究成果を還元することも重視されており、多様な人材がそれぞれの持ち味を活かすことでスピーディかつタイムリーな研究が行えるよう心がけています」

また、本教室では専攻医プログラムを一新し、確かな技術力とニューロサイエンスに立脚した脳神経外科を4年間で着実に習得できるよう多様なキャリアパスを提案しています。新しいプログラムでは、キャリアプランに合わせて臨床・研究の計画を立てることが可能な複数のコースを用意。従来は、2年間の初期研究後、4年ほどかけて専攻医目指すのが一般的で、その場合は大学院への進学が30代以降になりますが、本教室ではより早く研究の道に進みたいと希望する人のため、学位を取りながら専門医プログラムも受けられるよう多様性のあるコースを設けています。

また、海外での学会発表、英文論文の執筆、海外留学を推奨し、新しい手術手技などを学ぶための国内他施設への短期留学も支援しています。
「本教室には国外からの留学生も多く、多様な仲間たちで新しい教室づくりを楽しんでいます。一人でも多くの仲間に加わっていただき、ともに脳神経外科学教室の未来を創り、さらに多くの仲間が指導的立場の脳神経外科医、医療人、研究者として世界に羽ばたくことができるような教室運営を行いたいと考え日々取り組んでいます」

▲ 臨床医として約10年勤務した後に大学院へ進学した後藤秀輔さん。「臨床の現場を経験する中で、新しい治療法の開発に携わりたいと思い大学院へ進学しました。この教室は留学生も多く、幅広い分野の研究者が集まる多様性のある環境が魅力だと思います」
▲ 学生時代から脳梗塞治療に興味があったという舘澤諒大さんは、現在、脳梗塞の治療後に起きる虚血再灌流障害について研究している。「他大学との共同研究など多くの経験をしつつ、定期的に臨床も担当し、教室のメンバーと協力しながら技術・知識の向上を図っています」

(取材:2022年10月)

シームレスな手術教育で技術の向上を図る

手術技術の教育において手術前後のカンファレンス、手術中に行われるトレーニングは必須です。しかし、それだけでは高難度手術の習得は容易ではありません。北大病院は、2020年にご献体(カダバー)を使用した手術手技トレーニングと医療機器の開発を行う専用の実習室「カダバーラボ(臨床解剖実習室)」を開設。

本教室ではCadaver dissection コースを定期的に開催し、複雑な3次元解剖を体感してもらう実習を行っています。さらに、米国コロラド州立大学とのヴァーチャルリアリティシステムに関する研究も行っており、実際の患者さんの画像データをもとに手術シミュレーションを行う事で、効率的な手術教育に取り組んでいます。

▲ Cadaver dissection コースの実習ではご献体(カダバー)を使用しリアルな手術手技を体験 することができる
▲ VRを用いたシミュレーションに取り組む専攻医。内視鏡手術なども3D画像で体験することができる