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vol.42 皮膚科学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
医学の発展に貢献し、皮膚疾患の原因とメカニズムの解明に挑む

北海道大学大学院医学院 感覚器病学講座 皮膚科学教室

教授氏家うじいえ 英之ひでゆき専門医学系

  • 2002年、北海道大学医学部卒業
  • 2002年、北海道大学医学部附属病院 皮膚科 研修医
  • 2004年、北海道大学病院 皮膚科 医員
  • 2005年、独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター 皮膚科レジデント
  • 2010年、北海道大学大学院医学研究科修了 医学博士
  • 2010年、北海道大学病院 皮膚科 助教
  • 2012年、米国国立衛生研究所(NIH)免疫学 Dr. Ethan Shevach Lab, Visiting fellow
  • 2014年、北海道大学病院 皮膚科 助教
  • 2016年、北海道大学病院 皮膚科 講師
  • 2021年、北海道大学大学院医学研究院 皮膚科学教室 教授

高い専門性で皮膚科学の発展をリード

▲ 「皮膚科学という学問そのものに興味を持つことが大事。まずはしっかり勉強して皮膚科を好きになり、その中で生き生きと楽しく仕事することを目指してほしいですね」と語る氏家教授

皮膚科学教室は、1925年の開講以来、約100年に及ぶ歴史を持つ教室です。診療においては多くの専門外来を設置し、質の高い最先端医療を提供。アトピー性皮膚炎や乾癬、皮膚腫瘍といったcommon diseaseのみならず、自己免疫性水疱症、表皮水疱症、魚鱗癬掌蹠角化症など、希少・難治性疾患の専門外来を設置している数少ない施設の一つであり、極めて高い専門性を有しています。また、昨今患者数が増えている巻き爪などの治療を行う爪外来も開設しています。

第六代教授である氏家英之教授は、皮膚科学の特徴について「皮膚科は疾患の種類が多く、原因や病態が多様なため複雑でとっつきにくいイメージを持たれることがあります。実際、原因が不明で根本的な治療に至らないケースも少なくありません。しかし、『原因なくして皮疹なし』と言われるように、原因を追求していくことは重要であり、正解にたどり着くためのチャレンジを続けていくことが皮膚科の使命だと考えています」と語ります。

▲ 遺伝的背景や加齢などを背景にさまざまな誘発因子が加わることで自己抗体が誘導され、水疱性類天疱瘡が発症すると想定されている。重症化するとステロイドの長期服用が必要となり、特に高齢の患者ではQOLの低下が深刻な問題となっている

研究では、(1)自己免疫性水疱症の病態解明と新規治療法の開発、(2)皮膚の上皮幹細胞の基礎的研究と難治性皮膚疾患の病態解明への応用、(3)皮膚悪性腫瘍の新規治療法の開発、(4)遺伝性皮膚疾患の病態解明と新規治療法の開発の4つを主要なテーマとし、ゲノム編集技術やRNA-seq、Single cell解析などの最先端技術を積極的に取り入れ、in vitroの研究のみならず、教室オリジナルの疾患モデル動物を開発・応用するなどin vivoの研究にも力を入れています。
「本教室では、オリジナルのノックアウトマウスを用いた解析を行うなど、独自の基礎研究に注力できる体制を整えています。レアな疾患の原因や病態、メカニズムの解明につながる基礎研究を行うことは、北大だからこそやるべき研究領域だと思います」

2017年、氏家教授の研究チームは、糖尿病治療薬「DPP-4阻害薬」を服用中に難病である水疱性類天疱瘡を発症するケースについて、特定の白血球型(HLA遺伝子)が関連していることを発見しました。水疱性類天疱瘡にはさまざまな誘発因子がありますが、中でもDPP-4阻害薬を服用している高齢者では発症率が高く、患者のQOLに大きな影響を及ぼす疾患として注目されています。研究グループではDPP-4阻害薬の服用者に生じた水疱性類天疱瘡30例の皮膚症状や自己抗体を分類し、HLA遺伝子を解析。DPP-4阻害薬と水疱性類天疱瘡の発症が密接に関連することを明らかにしました。
「本研究結果は、水疱性類天疱瘡の病態解明のみならず、発症予防法や新規治療法の開発にもつながるのではないかと期待しています。今後は、HLA以外の遺伝的背景や加齢などが自己抗体を誘導するメカニズムの解明にも取り組んでいきます」

世界を視野に入れた広く深い研究活動

▲ 疾患の背後に潜む発症メカニズムの解明といった「無限のサイエンス」に挑む皮膚科学教室。

本教室は教育を重視し、学生教育や研修医・専攻医教育に積極的に取り組む環境を整えています。稀少疾患のほか、アトピー性皮膚炎や乾癬、皮膚腫瘍といったcommon diseaseの臨床や臨床研究にも力を入れています。大学院では、臨床の現場へダイレクトに還元できる研究を目指し、免疫や幹細胞、腫瘍、遺伝性疾患など幅広いテーマで臨床・基礎両面での研究を行っています。教室員の約4割が女性であり、女性が活躍でき、さまざまなライフイベントに対応できる組織づくりを推進し、大学院への進学も積極的に支援しています。
「大学院での研究は、確実に臨床のレベルアップにつながります。自分の手を動かすことでさまざまな分析・解析手法や実験手技を体験し、原因の特定や病態の解明へのアプローチ方法を身につけることができるのです」と氏家教授。臨床の現場では、さまざまな検査や分析をオーダーしますが、出てきた結果を受け取るだけではなく、どこに着目し、何を明らかにすべきかを明確に捉えることが、臨床のレベルを上げることにつながると指摘しています。

また、教室では海外留学を推奨し、その前提となる英語学習にも力を入れています。教室員は、ネイティブスピーカーの指導のもと、英会話レッスンや英語論文・学会抄録のチェックなどを受けることができます。海外留学へ向けたハイレベルなレッスンを受講することも可能で、本教室では常に3〜4名の教室員が海外留学しています。氏家教授は「医学の分野にはまだまだ未知の部分が多く、研究を通じて世界初の発見ができる可能性は大きいと感じています。英語で世界に向けて発信できれば、より多くの人々の役に立つことができます。世界を知り、世界を意識して研究するチャンスが大学院にはあります」と語り、広い視野で研究を展開できる人材の育成を目指しています。

▲ 水疱性類天疱瘡の発症メカニズムの研究をしている椎谷千尋さん。「臨床の現場で、原因や病態がよく分からないケースに遭遇し、既存の治療で改善できないことは研究をするしかないという思いから大学院進学を決意しました。臨床とは違うアプローチで疾患を見ていくことは大きな経験になっています」
▲ 川村拓也さんの研究テーマは水疱性類天疱瘡と好塩基球との関係性の解明。「学生時代から大学院への進学に興味を持っていました。臨床の現場で目に見えることに対応するだけでなく、その裏にある根本的な原理やメカニズムを解明することは面白いですね」

(取材:2022年9月)

皮膚疾患を系統的に学ぶ皮膚科専攻医研修プログラム

▲ 幅広いテーマについて中身の濃い講義が受けられる皮膚科専攻医研修プログラム

皮膚科専攻医研修プログラムは、1年間で一般的な皮膚科の知識を習得することを目的として、毎週木曜日の夕方に行っています。北大皮膚科スタッフ、医員、大学院生、関連病院医師が講師を務めています。どの講義もテーマごとに完結しており、単発で受講しても十分学習できる内容です。また、皮膚疾患は膠原病など内科系疾患が原因となる場合も多く、皮膚科専攻医・臨床研修医だけでなく、医学部学生も随時参加可能となっています。