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vol.21 形成外科学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学院 機能再生医学講座 形成外科学教室

教授山本 有平専門医学系

  • 1984年、北海道大学医学部医学科卒業
  • 1984年、北海道大学病院形成外科入局
  • 1991年、アメリカ合衆国アラバマ州立大学医学部 形成外科 Research Fellow
  • 2001年、北海道大学病院形成外科 講師
  • 2003年、北海道大学医学研究科・医学部 形成外科学分野 助教授
  • 2005年、同大学医学研究科・医学部 形成外科学分野 教授

質の高い医療の提供と基礎・応用研究の推進が形成外科医の使命です

「診療のみならず、しっかりとした形成外科のベーシックリサーチをやってみたいという方はぜひ私たちの教室へ」と話すのは、2005年から形成外科学教室を率いる山本有平教授。「形成外科医に課せられた使命の一つは、高度先進医療や質の高い標準治療を患者さんに提供すること。もう一つは、形成外科学が学問であることを理解し、学究の徒としてベーシックとクリニカルの両方の研究をしっかりと推し進めることです」

山本教授は、文部科学省などの競争的資金をコンスタントに獲得し、形成外科学の幅広い研究領域の中で、主に「創傷治療」「顔面神経」「皮膚悪性腫瘍」「リンパ組織」「再生医学」の五つの領域で、基礎と臨床の両面から研究を行い、得られた知見を臨床のさまざまな課題に生かしてきました。

創傷治療」は、教室が10年かけて取り組む研究領域です。「治りにくい傷をきれいに治す」をコンセプトに、傷跡が残らないような皮膚縫合の手法や、放射線のあたった皮膚、床ずれ、糖尿病性潰瘍など治りにくい傷の治り方のメカニズム、やけどや潰瘍などの瘢痕(はんこん)部にできるケロイドの病態や治療に関する研究に着手しています。また、「顔面神経」の研究では、顔面神経麻痺のマウスモデルを作り、脳生理学的、筋肉生理学的、電気生理学的なアプローチから、顔面神経の再建手術や投薬の検証を行っています。

初代、大浦武彦教授(現北海道大学名誉教授)の専門である「皮膚悪性腫瘍」は、1970年代から手がける研究分野で、近年は、皮膚がんの中でも悪性度合いが高く治療が難しいとされる悪性黒色腫(メラノーマ)の転移の分子生物学的解明に力を注いでいます。さらに、皮膚悪性腫瘍の研究は、リンパ浮腫など「リンパ組織」の研究ともリンクして行っています。本教室では、リンパ浮腫が見られる部分にはメラノーマが転移しやすいことを分子生物学的に解明したほか、手術によりがん組織とともに取り除かれたリンパ節を再建するリンパ組織の再構築の研究も行っています。

再生医学」は、教室が手がける最も新しい研究領域です。とりわけ、出産時に娩出される胎盤の羊膜由来の幹細胞を、乳がん摘出後の乳房再建、神経再生やケロイドの治療に生かす研究は画期的で、「乳房再建時に再生能力の高い羊膜の幹細胞を使うことで、幹細胞からサイトカインなどの成長因子が大量に放出され、再建した乳房の脂肪生着の効率を大幅に上げることができます」。

大学院の4年間は、生涯キャリアの10分の1にすぎません

▲ 出産後も臨床を行いつつ糖尿病足病変の研究を続ける大学院生。このように活躍できるのも山本教授の理解があってこそ

こうした研究はある程度、臨床経験を積んだ医師が、自ら臨床上の課題や解明すべきテーマを見いだして行ってきたものです。山本教授曰く「臨床系教室は、研究成果を臨床に生かす目的でベーシックとクリニカルの両方の研究をこなす大学院生を、育てていかなければなりません。私たちの教室では、ベーシックリサーチを自前で行い、最新の分子生物学的実験手法は、基礎系教室のカンファレンスに参加するなどして学んでいます。当然ながらクリニカルリサーチを行う環境も整えています。高度な形成外科手術の助手を務めながら複数の症例をまとめ上げ、患者さんのデータを分析して学会や論文で発表する。そのための指導も行っています」。

▲ 糖尿病マウスの潰瘍の組織から遺伝子を抽出

「大学は最も難しい手術、最先端の医療を経験する場です。大学院で学ぶ医師は、学問を発展させ、次代の医療につなげる役割を担っています。ベーシックリサーチを理解したうえで、臨床の成果を学会発表や論文という形で世に認めてもらうことが、自らの専門性を見極め、専門医として歩み出す第一歩となります。多忙で研究の時間が持てないという方に最適なのが大学院です。大学院博士課程で学ぶ4年間は、医師の生涯キャリアのたかだか10分の1にすぎません」

これまで3人のスタッフ医師が大学教授の職を得て、山本教授のもとを巣立っています。「大学の指導者を育てるのも教室の役割」と山本教授。「ベーシックとクリニカルの両面での研究業績が指導者となるための必須条件となります。私たちの教室では、そのどちらもこなしてきたという自負があります」

(取材:2019年1月)

北成賞はだれの手に「北大形成外科アカデミー」

▲ 北成賞・若手研究者部門受賞の様子(博士課程2年・草島英梨香医師=左)

教室員の優れた臨床・基礎研究のお披露目の場として、他施設で活躍中の研究者を招いて春と秋の年2回、教育フォーラム・ワークショップ「北大形成外科アカデミー」を開催。春の催しのハイライトは、教室員の1年間の研究上の功績を称える「北成賞(北大形成外科賞)」の授賞式と受賞者による記念講演です。北成賞は計5部門。臨床、基礎それぞれに1年間で最もインパクトファクターが高く、優れた論文を書いた人が研究論文部門、最も多く論文を書いた人が研究者部門で選出されるほか、若手研究者部門があります。北成賞の存在は、互いに切磋琢磨して日々研究力を養う教室員の“やる気”の源です。