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vol.19 精神医学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学院 神経病態学講座 精神医学教室

教授久住 一郎専門医学系

  • 1984年、北海道大学医学部医学科卒業
  • 1984年、同大学医学部精神医学教室入局
  • 1985年、市立室蘭総合病院精神科勤務
  • 1987年、国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第3部流動研究員
  • 1989年、北海道大学医学部附属病院医員
  • 1993年、同大学医学部助手(精神医学講座)
  • 1994~1995年、カナダ・トロント大学医学部精神薬理学研究室留学
  • 1999年、北海道大学病院講師(精神科神経科)
  • 2008年、同大学大学院医学研究科 准教授(神経病態学講座精神医学分野)
  • 2012年、同大学大学院医学研究院 教授(神経病態学講座精神医学教室)

「急がずに、休まずに」がモットーです

1876年開校の札幌農学校(後の北海道帝国大学、現北海道大学)の2期生でW.S.クラーク博士の薫陶を受けた思想家、内村鑑三(1861-1930)。その長子である内村祐之初代教授により1927年に精神医学教室は創設されました。2012年には7代目の久住一郎教授に引き継がれ、90年の歴史と伝統に育まれつつ発展を続けてきた教室は、現在も創設当時と変わらない活気にあふれています。

「研修医の教育プログラムは、50年以上も前にその原型が作られたもので、全国のどこにも負けてはいません。内容もさることながら、自分たちが先輩から学んだことを後進に返すという教える側のスタンスもしっかりと確立しているのが強みです」と久住教授。教室のモットーは「急がずに、休まずに」であり、「4代目諏訪望教授がドイツの詩人ゲーテ(1749-1832)の詩『星空のごとく/急がずに/休まずに/めぐれ誰しも/おのが責務(つとめ)のまわりを』から引用されたもので、急がずに思いをめぐらし、与えられた義務に向かって休まずに励もうという意味が込められています。患者さんと長く付き合い、徐々に回復していく様子を見守る精神科医の診療態度にも通じるところがあります」。

久住教授自身が主に取り組むのが、精神疾患の認知機能障害と糖脂質代謝障害に関する研究です。

統合失調症や気分障害の患者さんには、治療で症状がある程度改善しても社会生活がうまくいかないケースがあり、その要因となっている認知機能障害に関し、特別なトレーニングで機能を回復させる認知リハビリテーション研究のほか、有効な治療法となる薬物療法や心理社会的治療の研究開発などを行っています。

糖脂質代謝障害については、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)を抱える人の糖尿病有病率は一般の人の2倍という現状を踏まえ、患者さんの血糖モニタリングを行い、有効な予防法を検討。その一方で、「精神症状だけではなく患者さんの体の管理にも目を向ける」をコンセプトに、日本精神神経学会を代表し、日本糖尿病学会や日本肥満学会と合同で、統合失調症患者の糖尿病予防ガイドラインの作成に携わっています。また、動物実験を用いて、抗精神病薬が高血糖を誘発する仕組みの解明にも取り組んでいます。

五つのグループが横断的に関わりながら診療、研究を行っています

精神医学教室では、統合失調症、気分障害、臨床精神病理(神経症)、臨床神経生理(てんかん)、児童思春期精神医学の計五つの臨床系と研究手法系のグループが関わり合いながら、診療と研究を行っています。

「精神医学教室は臨床系教室でありながら、従来から自前で基礎研究も盛んに行ってきました」と語る久住教授も1994年、当時教室では未着手の領域だった分子生物学の研究手法を学ぶ目的で、ドーパミンD4、D5受容体のクローニングを成功させたカナダのトロント大学へ留学。抗精神病薬の作用機序を探索する分子生物学的研究に携わり、その手法を教室に持ち帰りました。

「大学院生や若手の医師は、基礎から臨床的課題まで幅広い領域の研究を行っていますが、研究を始めるのは臨床医として一人前になってから、というのが教室の伝統です。皆、臨床を行っていくなかで自ずと問題点を発見し、これを研究してみたいというテーマに行き当たります。多彩な研究領域は、そうした一人一人の問題意識によって開拓されてきたものです」

現在、臨床系のグループと研究手法系のグループが合同で、「認知機能」という共通の切り口で疾患横断的な研究を行っています。同様に、幼少期に受けた虐待などの影響で発症しやすくなる精神疾患に関し、統合失調症グループでは「精神症状と幼少期ストレス・認知様式・気質性格との関連」、気分障害グループでは「うつ症状に対する幼少期虐待感情気質・成人期ライフイベントの役割」といったテーマで、研究手法系のグループと情報を共有しながら、検討を重ねています。さらに、同じ切り口で「月経前不快気分症候群」などの研究も行っています。

久住教授によれば「ある疾患で行われている手法を、他の疾患にも応用して新しい所見を見いだす方法はある意味ユニークかもしれません。たとえば、統合失調症を対象として国際的に始まった認知リハビリテーションの手法を、早い段階でうつ病に応用したのも私たちです」。

一方、児童思春期精神医学グループは、圧倒的に不足している児童精神科医の育成を目的とした全国でも数少ない講座開設によって新たに生まれました。札幌市と共同で、児童の気分障害の診断基準や治療の標準化、抗うつ薬の有効性や自殺予防に関する研究のほか、発達障害の原因究明、注意欠如多動症児童のペアレントトレーニングなどを行っています。

(取材:2018年9月)

教室行事のウェブ同時発信で、道内各地の仲間とディスカッション

▲ 成田尚助教(前方向かって左側)による研究報告「MRI・拡散画像からみる精神疾患の白質構造変化」の様子(2018.10.3)。前方(向かって右側)のモニター画像を各地に配信

毎週水曜の夕方は、学外講師による講演や教室員による研究報告などを行い、北海道内の関連基幹病院13施設にリアルタイムでウェブ配信しています。配信先との双方向的なディスカッションも可能で、「教室との一体感が増す」と遠隔地で働く研修医や若手医師から好評を博しています。若手のアイディアから生まれた、教室には欠かせないコミュニケーションツールです。