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vol.25 循環病態内科学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学院 内科学講座 循環病態内科学教室

教授安斉 俊久内科系

  • 1987年、慶應義塾大学医学部医学科 卒業
  • 同年、慶應義塾大学病院 初期研修医
  • 1991年、浦和市立病院(現さいたま市立病院)内科
  • 1993年、慶應義塾大学医学部内科学 助手
  • 1995年、カリフォルニア大学サンディエゴ校循環器科 留学
  • 1998年、慶應義塾大学医学部内科学 助手
  • 2004年、慶應義塾大学医学部内科学 専任講師
  • 2007年、慶應義塾大学医学部循環器内科学 専任講師
  • 2010年、国際医療福祉大学 教授
  • 同年、同大学三田病院心臓病センター循環器内科 部長
  • 2011年、国立循環器病研究センター心臓血管内科部門 部長
  • 2017年、北海道大学大学院医学研究院循環病態内科学教室 教授

北海道全域のコホート研究で難治の患者さんのための個別化医療を

血液を全身に送り出し、循環させる役目を担う心臓や血管を扱う循環器内科。北海道大学病院では、安斉俊久教授率いる総勢40人の循環器内科の医師らスタッフが一丸となり、“患者さんにできることはすべてやる”をモットーに、急性心筋梗塞、急性心不全などの救急医療のほか、重症心不全、難治性不整脈、心臓弁膜症などに対する高度先進医療や生活習慣病の予防医療に取り組んでいます。

「『救命救急が好き』『絶対に助けると言ってみたい』といった医師の本能を持つ人は循環器に向いています。循環器医療には、カテーテルから心臓移植、緩和ケアまでさまざまな治療のオプションが用意されており、私たちは命に関わる患者さんに手を尽くすことができます」

こうしたメッセージには、赴任先の医療機関などで遭遇するさまざまな課題に対し、常に患者さんに寄り添う解決法を模索してきた安斉教授のスタンスがにじんでいます。

▲ 図1:道内で症例を重ねる大動脈弁狭窄症の新規治療法TAVI(カテーテル大動脈弁置換術)の実施前後における血流動態の変化(左側)と壁せん断応力の低下(右側)。MRIを用いた4次元流速解析(4D flow MRI)画像でTAVI治療の効果を流体力学的に可視化した。

前任地の国立循環器病研究センターでは「循環器にも緩和医療を導入して患者さんの心身の負担を和らげたい」と、全国初の循環器に特化した緩和ケアチームを結成。2017年の北海道大学赴任後は、高齢などで手術リスクの高い心臓弁膜症などの患者さんに、より低侵襲で術後のQOL改善が見込まれるカテーテルを用いた新規治療法*を北海道で初めて実践するなど、道内における循環器医療のエボリューションに貢献してきました(図1)。

▲ “患者さんにできることはすべてやる”循環器内科のスタッフ

現在は、安斉教授が中心となり、道内全域を対象とした心不全と心房細動に関する多施設共同コホート研究プロジェクト「エルムスタット(ELMSTAT:Epidemiological Multicenter Study for Tailored Treatment)」を進めています。「道内22の関連医療機関と連携し、2千人規模で患者さんのゲノムを収集。遺伝子変異や血中のバイオマーカーやタンパク質の発現、代謝がどうなっているかなど、一人一人のタイプをメタボローム(網羅的代謝物)解析やオミックス解析で明らかにし、個別化医療に結びつけたい」と、2020年1月より研究を開始しています。

「超高齢化社会となり、HFpEF*など標準治療では治らない患者さんが増えてきました。そうした方々のタイプの違いを明らかにし、患者さんごとに最善の治療が行えるような仕組みを作り、医師や基礎研究者が共有できる財産として残したい。関連医療機関の多い北海道はコホート研究に適しており、生命科学の拠点である北大には優れた基礎研究者が大勢いらっしゃるので、絶好の機会ととらえています」とエルムスタットに未来を託します。

常識が覆るような発見に循環器研究のやりがいを感じます

日々の臨床で遭遇する疑問や課題を病態生理まで掘り下げ、基礎研究と臨床研究の両面から病態基盤の解明に挑む“フィジシャン・サイエンティストの育成”を目標に掲げる安斉教授は、卒後3年時に心筋梗塞の患者さんの死に遭遇したことがきっかけで研究に目覚め、炎症の指標が高い心筋梗塞の患者さんは心破裂の合併症が予測できることを突き止めました。

▲ 不整脈の研究を行う甲谷太郎医師(博士課程2年)。心房細動モデルラットを用いた実験で、心房細動とカリウムチャネルの関係を探る傍ら、細胞薬理学教室に通い、パッチクランプ法でカリウム電流を測定する。「心臓の生理学的な部分やダイナミックな血行動態に魅力を感じています」

時には、心筋梗塞単独より心筋梗塞発症前に狭心症を併発する患者さんの方が予後は悪いとする欧米の研究者にも屈することなく研究を続け、日本人では併発する患者さんの方が圧倒的に予後は良いことを明らかにして「世界の常識が覆った」ことも。「循環器の研究は奥が深い。病気自体はシンプルですが、詳しい原因がわかっていないことも多く、日常のありふれた常識が覆るような発見があるところにやりがいを感じます」

教室員40人中25人が大学院生という若さと活気あふれる循環病態内科学教室では、大学院生は主に①不整脈研究②心不全・心筋症研究③構造的心疾患研究④心エコー研究⑤心不全骨格筋研究⑥難治性心不全に対する慢性炎症制御に基づく新規治療法の開発⑦心臓CT、核医学、MRI研究――の七つのグループのいずれかに属し、自らの臨床経験に基づく多彩なテーマで研究に臨んでいます。

安斉教授によれば「心臓内部の圧を肝臓の硬さで推定する手法の研究をアメリカの学会で発表した大学院生がいます。肝臓に少し振動を加えてMRI撮影を行い、どのくらい揺れたかで肝臓の硬さが計算できる仕組みは大変面白いと思います。このほか、ノックアウトマウスを用いて心房細動発症のメカニズムの解明に取り組む大学院生や、運動時に筋肉から分泌されるマイオカインという物質が、心臓に対して保護的に働く効果があることを突き止めた大学院生もいます。大学院1年目は患者さんの診療を通じて医療の現状などに疑問を持ち、そうした疑問を解明するような研究テーマを見つけるとモチベーションはアップしますよ」。

▲ 北大病院の心臓カテーテル検査室で検査結果を解析する小林雄太医師(博士課程2年)。構造的心疾患の患者さんに運動負荷検査を行い、新しい治療法の予後予測評価や効果判定の予測評価を模索する。「循環器の診療は一分一秒を争いますが、それだけにやりがいがあります」
▲ 肺高血圧症の患者さんのカテーテル検査時に心エコーを撮影して左室拡張機能の評価を行う千葉泰之医師(博士課程2年)。「これまで注目されてこなかった肺高血圧症患者さんの左室拡張能を調べています。研究には未知の部分を少しずつ解決する面白さがあります。実績豊富な安斉教授の指導が支えです」

海外留学を推奨し、自らは「学生の時分から海外志向で、学位取得を待たずに渡米してしまった」と話す安斉教授は「留学はやむにやまれぬ衝動がないと踏み切れないところが結婚と似ているかもしれませんね(笑)。そのぐらいの思いで臨んでほしい。留学先で刺激を受けたことが診療を見直すきっかけにもなりますよ」と若手医師の行動力に期待を寄せます。

(取材:2020年1月)

新規治療法*・・・MitraClipⓇ(マイトラクリップ、経皮的僧帽弁接合不全修復術)僧帽弁閉鎖不全の新しい治療法。カテーテル先端のクリップで僧帽弁をつかみ、引き合わせることで血液の逆流を抑える(2018年道内初施術)。WATCHMANⓇ(ウォッチマン、経皮的左心耳閉鎖術)心房細動の新しい治療法。左心耳入り口にデバイスを留置し血栓の左心房への侵入を防ぐ(2019年道内初施術)。

HFpEF*(ヘフペフ)・・・10年ほど前に認知された心臓の収縮機能は保たれているが拡張機能が低下した心不全。全心不全の半数を占める。

循環病態内科学教室イベントカレンダー

▲ 左から、医局説明会&ジンギスカンパーティー(7月)、医局忘年会(12月)、スキー温泉旅行(2月札幌国際スキー場にて)の様子(いずれも2018年度開催)

年度初めは新人歓迎会と日本ハムファイターズ野球観戦会(4月)。教室説明会を5月~7月に3回予定しています。以降、同門会主催の総会・講演会(6月)、ジンギスカンパーティー(7月)、同門会主催ゴルフ大会(8月)、医局対抗サッカー大会(11月)、大忘年会(12月)と恒例のイベントが目白押し。年明けのスキー温泉旅行で盛り上がりはピークに達し、3月の送別会で年度を締めくくります。もちろん、循環器内科医の本分である研究会、勉強会も随時行っています。