北海道大学大学院医学研究科 内科学講座 免疫・代謝内科学分野
教授渥美 達也内科系
- 1988年、北海道大学医学部卒業、同医学部内科学第二講座入局、同大学院医学研究科入学
- 1992年、北海道大学大学院医学研究科修了(医学博士)、同年10月より苫小牧市立病院内科勤務
- 1994年、英国ロンドン・聖トーマス病院レイン研究所、ループスリサーチユニットに留学
- 1997年、北海道大学医学部附属病院第二内科医員。以後、助手、講師、准教授を経て2012年より教授に就任、現在に至る
国内では研究機関が少ない
貴重なテーマに取り組んでいます
免疫・代謝内科学分野は、1923年(大正12)の講座開設以来、90年以上の歴史を誇る教室です。6代目となる渥美達也教授が率いる現在は、リウマチ膠原病学、糖尿病・内分泌学、腎臓内科学の3分野の研究を主に行っています。伝統的にグループ内の垣根は低く、研究室内でのコミュニケーションはとても円滑です。
保田晋助講師をリーダーとする膠原病グループでは、膠原病の中でも抗リン脂質抗体症候群の研究を長年続けています。自己免疫疾患であり血栓症が起こりやすい特殊な病気で、他の研究機関でも取り組んでいるところは少なく、本グループは日本トップの臨床と研究を行っています。代表的な膠原病である全身性エリテマトーデスや患者数の多い関節リウマチについても、その発症のメカニズムや病態について、基礎から臨床の間をつなぐトランスレーショナルな領域を探求しています。また、稀少難病である膠原病の臨床研究を通して、患者さんの治療に役立つエビデンスにつなげています。
三好秀明診療准教授をリーダーとする糖尿病・内分泌グループでは、(1)肥満・動脈硬化、(2)膵β細胞、(3)内分泌の3つの領域で基礎研究を行っています。また、糖尿病、内分泌、肥満、動脈硬化、それぞれの専門学会の教育機関として認定されており、数多くいる患者さんに最良の医療を提供するための専門医・指導医育成に努めています。その中で、臨床研究に特に力を入れており、大学院生に限らずグループ員「全員」が各人の研究テーマを持ち、臨床研究を担当しています。エビデンスの確立に向けた質の高い臨床研究を目指していますが、これも全道各地に拡がる、数多くのグループOBの先生たちの強力なバックアップのおかげで、とても速いスピードで多施設共同研究を進めることができています。
西尾妙織診療准教授をリーダーとする腎臓グループの最大の特徴は、多発性嚢胞腎(PKD)という腎臓の遺伝病について研究している点です。国内では研究している施設がほとんどなく、PKDの純粋なノックアウトマウス(1個以上の遺伝子が無効化された遺伝子組換えマウス)を持っている機関も本グループだけです。数少ない専門機関であることから患者さんが集まり、多くのデータをもとに最先端の研究成果を上げています。PKDは最近になって難病指定された病気で、現在の日本では4,000人に1人の割合で患者さんがいると見られ、発見・診断技術の向上や治療薬の開発・普及などに大きな期待がかけられています。
自分のペースに合わせて臨床・研究に取り組めるのは
人数の多い教室ならではのメリットです
免疫・代謝内科学分野は以前は「第二内科」と呼ばれ、幅広い分野で臓器別専門に特化しない総合的な臨床・研究が行われています。スタッフの交流も密で、知識・技術・設備などを共有できる機会があり、臨床も研究もやりやすい環境が整っているといえます。
「当分野では医局会という全体ミーティングや、総回診という3グループ合同のカンファレンスなども定期的に開き、非常に連携のよい教室です。大学院で研究のための教育をしっかり受けることはもちろん、医局全体で指導医の育成にも力を入れています。優れた指導医になるためにはEBM(evidence-based medicine:根拠に基づく医療)を理解し実践できる医師にならなければなりません。エビデンスは論文という形で世に出ていますので、論文を読み込み、どういう背景で研究が行われ、その結果がどのようにまとめられているかを理解するには、実際に研究の経験が必要です。自分自身が研究に携わらなければ本当の意味での専門医にはなれないと確信しています。そのためにも、一定の期間、大学院に在籍し研究に従事することは非常に重要であると思います」
大学院は、臨床の現場で日々患者さんと向き合うことでさまざまな疑問が湧き、その疑問を大学院の充実した環境の中で思う存分探求できる点が大きな利点です。さらに、人数の多い規模な教室では留学や共同研究、出産・育児などで一時的に職場を離れる際も業務をカバーし合うことができます。実際、本分野には女性医師も多数所属しており、ワークライフバランスに配慮した研究活動に従事できます。
また、近年の医学研究はグローバル化が進み、英語は必須のスキルとなっています。本分野では英語教育にも力を入れており、国内外で存分に活躍できる能力を身につけることができます。
「ここではEBMに基づいた高い診療能力、充実した環境での研究経験、グローバル化に対応した各種スキルを身につけることができます。伝統ある教室で医師としての目標を見つけ、キャリアを磨いてほしいと思います」
(取材:2016年2月)
学会発表や留学に自信をつけるEnglish Seminar
免疫・代謝内科学分野では、マリア オルガ アメングアル プリエゴ助教を講師に大学院生を対象としたイングリッシュセミナーを開いています。セミナーは週3回行われ、事前に申し込んだ受講生が1時間ほどレッスンを受けます。講義はほぼすべて英語で、スライドを使ってプレゼンテーションやそれに対する質疑応答・討論などを行います。最初はなかなか言葉が出なかった学生も1年ほど続けると格段に英語力が向上し、国際学会での発表や留学にも自信を持って臨めるようになります