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vol.31 医学教育・総合診療医学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
ICT活用によるシームレスな医学教育の実現を目指して

北海道大学大学院医学院 社会医学講座 医学教育・総合診療医学教室

教授高橋 誠社会医学系

学歴
  • 1992年、東京医科歯科大学 医学部 医学科卒業
  • 2001年、東京医科歯科大学 大学院医学系研究科 外科学系整形外科学専攻 博士課程修了
職歴
  • 1992年、東京医科歯科大学医学部附属病院 整形外科 医員(研修医)
  • 1993年、大宮赤十字病院 麻酔科 嘱託医師
  • 1994年、中野総合病院 整形外科 医師
  • 1994年、九段坂病院 整形外科 医師
  • 1995年、諏訪中央病院 整形外科 医師
  • 2001年、済生会川口総合病院 整形外科 医長
  • 2002年、九段坂病院 整形外科 医長
  • 2003年、東京医科歯科大学医学部附属病院 整形外科 医員
  • 2003年、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脊椎脊髄神経外科学分野 助手
  • 2004年、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 整形外科学分野 助手
  • 2007年、諏訪中央病院 整形外科 部長
  • 2009年、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 臨床医学教育開発学分野 講師
  • 2013年、東京医科歯科大学医学部附属病院 病院長補佐(教育研修担当)
  • 2014年、東京医科歯科大学医学部附属病院 総合教育研修センター センター長
  • 2019年~現在、北海道大学大学院医学研究院 医学教育・国際交流推進センター 教授
  • 2019年~現在、北海道大学大学院医学研究院 医学教育・国際交流推進センター 統括副センター長

新しいオンライン臨床教育評価システムEPOC2をキャリア形成のポートフォリオに

▲ モバイルを活用したオンライン研修評価システムの開発で国の医学教育行政をアシストする高橋教授

経験豊かな整形外科医として診療、研究、若手の指導に携わる傍ら医学教育に通じ、医学教育に関する国の行政の施策を軽快なフットワークでアシストしてきた高橋誠教授。2019年の医学教育・総合診療医学教室の教授就任後は、教室運営に着手しつつ、オンライン卒後臨床教育評価システムEPOC2(エポック・ツー)や、医学生対象の共用試験OSCE(オスキー)などの開発に携わり、医学生が行う臨床実習から卒後の臨床研修、その先の専門医研修に至るまでのシームレスな医学教育の実現に向けた研究開発に取り組んでいます。

臨床医の必須要件である臨床研修は、戦後間もなく設置された各診療領域を1年かけてローテーションで回るインターン制度に始まります。その後の医師法改正により、1968年にインターン制度が廃止され、旧臨床研修制度がスタートしました。さらに2004年、厚生労働省の臨床研修に関する省令[1]を受けて新研修制度が発足し、以来5年ごとに見直しが行われてきました。

この新研修制度の開始に合わせて、臨床研修で研修医が経験すべき「診察法・検査・手技」「症状・病態・疾患」など、省令で定めた研修項目(到達目標)に応じた研修医のスキルを評価・認定するための制度作りが進められ、2004年に、研修医の評価を行なう指導医やメディカルスタッフらのサポート役として、評価内容をPCからオンラインで入力できるシステム、初代EPOC(Evaluation system of Postgraduate Clinical training)が誕生しました。

▲ EPOC2ではスマートフォンの画面をタップするだけで簡単に評価入力ができる

高橋教授は、2016年からこのEPOCのリニューアル版であるEPOC2の開発に携わってきました。リニューアルの目標を、1.入力を簡単に 2.新たな評価票、360度評価に対応 3.ポートフォリオ機能も搭載 4.将来は学生実習/専門研修との連携が可能に、と掲げ、「そもそも何のために評価を行なうのか、どういった評価が適切なのかという観点で評価項目の見直しを図り、スマートフォンの画面をタップするだけで入力できるなど、使い勝手の改善も図りました」。(高橋教授)

また「“評価項目が物足りない”との研修医療機関の声に応えて、評価のスケールを、従来の『(身体診察が)a.十分できる、b.できる、c.要努力』といった単純なものから『1.指導医の直接の監督の下でできる、2.指導医がすぐに対応できる状況下でできる、3.ほぼ単独でできる、4.後進を指導できる』など、評価の基準軸を具体的に定めたスタイルとしました」。

「EPOC2の大きな改良点は、コメント欄に研修医が自由に研修の振り返りや講習会・勉強会への参加、学術活動などのさまざまな学びの記録を書き込めるようにしたことです」と高橋教授は続けます。「EPOCは厚労省が定めた研修評価の記録業務をサポートするツールとしてスタートしましたが、私には、何より研修医自身のためのシステムでありたいという思いがあります。研修医の皆さんには、EPOC2をキャリア形成のためのポートフォリオとして生涯活用いただき、自らの成長をつぶさに感じ取っていただければと思います」(図1)

▲ 図1.高橋教授が組み上げた「臨床研修の到達目標、方略及び評価『達成度評価の構造』」(厚生労働省 医師臨床研修ガイドライン-2020年度版)より

評価記録ツールに法的な規定はないものの「今では9割の研修医療機関がEPOC2を活用しています」と胸を張る高橋教授。現在は「多くの利用者のリクエストに応え、至急性の高いものから機能の改善を図っているところです」。



EPOCリニューアルの根底にあるのは、文部科学省と厚生労働省が協働で進める「シームレスな医師養成に向けた改革」のコンセプトです。両省は、文科省の管轄である医学部(卒前)の臨床実習から厚労省が管轄する卒後の臨床研修、あるいはその先の専門医研修までの研修等のプロセスを一本化し、臨床医育成のための医学教育を縫い目なく連続して行なうことで、研修内容の重複やブランクを解消し、医師の資質向上を図ることを念頭に、互いに政策的な齟齬が生じないよう情報共有や交換人事を行い、調整を図ってきました。

高橋教授もまた、そうしたコンセプトの一環として、厚労省の採択課題である「ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究『ICTを活用したシームレスな評価体系構築』」の研究協力者として、卒前・卒後に実施されるあらゆる研修の評価を一貫してモバイル端末上に記録できるEPOC2の研究開発を推し進め、さらに、臨床実習の前後に医学生が受験する共用試験OSCEの開発にも携わってきました。

医学生であっても患者さんへの接し方など一定レベルの勉強は済ませている必要があります

OSCE(Objective Structured Clinical Examination、客観的臨床能力試験)は、2001年に文科省が策定した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づき、医学部後半のカリキュラムである臨床実習が、従来の見学型から診療参加型へと見直されたことに伴い、医行為を伴う診療参加型実習に医学生が自信を持って臨める技能や態度を備えているか(臨床実習前OSCE)、さらに、医学部卒業後の臨床研修に参加できる準備が整っているか(臨床実習後OSCE)を評価することを目的として、2005年(臨床実習後OSCEは2020年)にスタートした全国共用の実技試験です。

高橋教授は「5年ほど前にOSCEの診察部門の評価に“関節を診る”という項目を加えることになり、整形外科が専門だった私もお手伝いをするようになりました。当時は、医師主導で病状や病歴を患者さんに伺ういわゆる問診が、“3分診療”などと揶揄されがちでしたが、ある患者団体の方から『医師は外来で患者さんと初対面で話をした時から人間関係を作っていくもの。信頼関係ができて初めて効率的な治療が行えるのでは』という指摘をいただきました。ですから、たとえ学生であっても患者さんの前に出るときには、患者さんへの接し方を初めとする一定レベルの勉強は済ませている必要があります」。

「十代の頃からだれかに教えたり、皆でわいわいやったりが好きだったので、なりたい職業は医師か学校の先生でした」と明かす高橋教授は「スポーツが好きだったので整形外科に進み、そこで出会った若い患者さんや研修医とのやりとりが楽しくて医学教育に関心を持つようになりました」。

▲ 高橋教授をサポートする医学教育・総合診療医学教室および医学教育・国際交流推進センターのスタッフ一同

「以前勤務していた病院の外来で私が脊椎の診療を行うと、どうしても他のドクターより時間が押してしまう(笑)。高齢の患者さんの話を聞いているうちにあっという間に時間が経ってしまうのですが、つらいのを我慢して外来に来てくれた患者さんには、きちんと向き合いたかったんです」

こう振り返る高橋教授に「増え続ける医療・医学の知識、AIやICTによるテクノロジーの進化、少子高齢化や人口減少といった今日の医療現場をとりまく現状を踏まえて、今後求められる医療や、医師に必要な資質」について伺うと「今まで丸暗記していた知識は、ネット検索で補えます。むしろ知識の供給源であるスマートフォンやAIなどのテクノロジーを使いこなすリテラシーがこれからは必要となります。また、高齢化が進むと扱う病気の構成も変わります。戦後に流行した感染症や伝染病、それが落ち着くと今度はがん治療が優先課題となり、その後の長寿社会で生活習慣病が問題となってきました。超高齢化社会の今後は、最後を安らかにという終末期医療の比重が増してくると思います」。

医学教育・総合診療医学教室では「これからも各種研修に関する評価システム等の開発を続けるほか、指導法や教材の開発、医学生の学習行動や医師のキャリア選択に関する研究など、医学教育に関するさまざまな研究に着手する予定です。北海道大学では新型コロナ研究でも多くの先生が活躍していますが、いつも学生の身近に一流の研究者がいて、さまざまな学部と連携できる、そのような教育環境が医学生には最適だと思います」。

[1] ^ 研修医が任意の診療科に入局して行なう実地研修が主目的であった旧臨床研修制度は、“一般的な診療において頻繁に関わる怪我や疾病に適切に対応できるような基本的な診療能力を身につけるものでなければならない”とした厚労省の基本理念に基づき、2000(平成12)年の医師法改正で見直され、研修医が入局の前に総合的な診療のスキルを養うための新研修制度が発足し、さらに、これまでの努力義務から卒後2年間の必修として義務化された。

(取材:2020年12月)

医学英語セミナーで海外留学・国際学会発表・英語論文のコツをつかもう

▲ 2021年1月12日開催のエイドリアン・コヴァチ教授のセミナーには学内から100人を超える聴講の申し込みがあった

高橋教授が統括副センター長を務める大学院医学研究院の医学教育・国際交流推進センター医学英語教育部門では、学内のすべての学生や教職員の希望者を対象にZoomウェビナーを用いた医学英語セミナーを開催しています。

2019年度は「英語論文を読んでみよう」「国際学会に参加してみよう」「英語で病院の案内をしてみよう」「英語で薬の説明をしてみよう」といった医師の日常に不可欠なベーシックな講習会でしたが、2020年度は一歩踏み込んで、日本医学英語教育学会理事の押味貴之准教授(国際医療福祉大学)による「国際学会の英語ポスター発表で優秀賞を取る方法」「英語での志望動機書の書き方とネットワークの築き方」、アントワープ大学のエイドリアン・コヴァチ教授による「興味を引く研究論文を執筆するために推奨すること」「ジャーナルの投稿プロセスや編集者とのコミュニケーションの秘訣を編集者目線で紹介」など、全学の留学志向の学生や研究者に耳よりな情報を提供して好評を博しました。

2021年も随時ウェブのお知らせコーナーでセミナー開催の告知を行いますので、どうぞお楽しみに!