北海道大学 医学部医学科|大学院医学院|大学院医理工学院|大学院医学研究院
メニューを開く
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる

vol.05 公衆衛生学分野

  1. HOME
  2. 医学院
  3. Research Archives
  4. 社会医学系
  5. vol.05 公衆衛生学分野
北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
vol05メイン画像

北海道大学大学院医学研究科 社会医学講座 公衆衛生学分野

教授玉腰 暁子社会医学系

  • 1987年、名古屋大学医学部卒業
  • 1991年、名古屋大学医学部助手
  • 1998年、同助教授
  • 2006年、国立長寿医療センター治験管理室長
  • 2007年、愛知医科大学医学部公衆衛生学准教授、2009年同教授
  • 2012年より北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野教授

数年〜数10年単位で追跡するコホート研究で
生活や環境と健康との関係を解析しています

公衆衛生学分野では、(1)人々がよりよく生きるために必要な社会的制度の設計という行政機能、(2)その根拠となるエビデンスを構築する研究、(3)すべての人々のよりよい生活の実現に向けた実践的活動を3本柱に、健康的で暮らしやすい社会を実現するための研究を行っています。

「胎児・新生児から高齢者まで、健康な人も病気を抱えている人もその人らしく身体的・精神的に健康に暮らせる社会の実現を目指す学問です。具体的には、人々の生活の仕方や地域の環境、体質、習慣などが健康にどう影響するかを長期的に追跡調査し、その結果を解析してエビデンスとして提供します。研究成果を地域での医療政策などに活かすことを目標とする社会学的な側面を持つ分野でもあります」

研究活動の中核をなすのがコホート研究(ある集団を一定期間追跡し疾病の発生率などを比較する)で、 JACC Studyや NISSIN Projectなどの大規模なコホート調査を他大学と共同で行っています。

「JACC Studyはすでに追跡調査を終了し、現在はさらに解析を進めているところです。NISSIN Projectは65歳住民を対象とするユニークなコホート研究で、高齢者の健康増進/健康障害の予防などに役立てることを目的としています。これまでの調査の結果、歩くスピードが速い人と遅い人を比べると、速い人の方が死亡率が低いということが分かってきました」

Zhao W, et al. Age and Ageing 2014
▲ Zhao W, et al. Age and Ageing 2014

コホート研究は、暮らしと健康との関連を調べるものであり、疾病・障害の発生につながるメカニズムそのものを解明するわけではありません。メカニズムの解明については基礎分野の研究者に託すことになります。

「何らかの関係性が表れた場合、基礎分野の知見を当てはめて説明がつくかどうかを検討することは重要です。しかし説明のつかないことも多く、そこで何が起きているかを知るためには、今後の基礎研究につながるようなデータの取り方を工夫することも求められます」

研究室ではコホート研究の一連の流れを経験できる環境を整え、対象地域のリサーチから調査計画の立案、関係各所との連携、データの回収・解析まですべてのプロセスの知識・ノウハウを身につけることができます。将来、他の研究機関や自治体などでコホート研究をはじめとする疫学研究に携わる際、全体を見渡しリーダー的立場で活躍できる資質が培われます。

人々の暮らしや健やかな老後に貢献する
社会的意義の大きな研究分野です

公衆衛生学分野では、道内を調査対象とした研究も行っています。調査対象は一般地域住民、在宅高齢者、自治体職員など幅広く、多面的なアプローチが試みられています。

「HbA1c(糖尿病と密接な関係があると言われるヘモグロビン)に関する調査では、HbA1cの測定方法によって検査値が変わるという現象が見られ、測定方法変更が患者や地域に与える影響について検討を行っています。患者を継続的に観察し治療効果を判定する臨床レベルではあまり問題になりませんが、測定方法の変更により検査値が変われば、受診者の受け止め方や自治体・地域での対策などには大きな影響を与えます。北海道は他の地域にくらべてHbA1cが高いと言われていますが、検査方法の影響もあるかもしれないと考えています」

公衆衛生学分野には、医師以外にも栄養士や看護師、保健師なども所属し、医学的・疫学的・社会学的見地からさまざまな研究が行われています。長期的に追跡することで初めて明らかになるエビデンスもあり、解析結果は国や地域の医療政策にも影響します。

「臨床と違い患者さんから直接感謝されるような仕事ではありませんが、社会的意義の大きい分野です。将来の進路として自治体や官公庁、WHOなどの世界的な機関にも道が開かれています。女性にとって働きやすい環境でもあり、一生をかける仕事として取り組む価値があると思います」

(取材:2014年10月)

多彩な分野から講師を招き、 興味と見識を広げる特別セミナー

年に数回、学外から講師を招き公衆衛生、栄養、運動、食と健康など多彩な講演を行っています。過去には「簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ):基礎理論から将来展望まで」、「身体活動を促進するためのポピュレーションアプローチ」、「空間データの可視化と公衆衛生対策への応用」といった様々なテーマでご活躍中の先生をお招きしています。公衆衛生の研究者・学生以外にも、市町村の保健師など多方面の分野から参加者が集まり、刺激の多い内容となっています。