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vol.38 組織細胞学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
最新の解析技術を駆使し、脳の作動原理のデザインを読み解く

北海道大学大学院医学院 解剖学講座 組織細胞学教室

教授藤山 文乃生理系

  • 1987年、国立佐賀医科大学医学部医学科卒業 医師免許取得 内科医局員
  • 1991年、日本内科学会 認定医
  • 1992年、国立佐賀医科大学医学部 解剖学教室 助手
  • 1993年、日本神経学会 専門医
  • 1993年、日本内科学会 専門医
  • 1996年、博士(医学)学位取得
  • 1997年、オックスフォード大学 MRC 研究員(文部省在外派遣)
  • 1999年、テネシー州立大学医学部 Visiting Assistant Professor
  • 2000年、国立京都大学医学研究科 高次脳形態学教室 助手
  • 2004年、国立京都大学医学研究科 高次脳形態学教室 講師
  • 2005年、国立京都大学医学研究科 高次脳形態学教室 助教授
  • 2007年、国立京都大学医学研究科 高次脳形態学教室 准教授
  • 2012年、私立同志社大学大学院脳科学研究科 神経回路形態部門 教授
  • 2020年、国立北海道大学大学院医学研究員 組織細胞学教室 教授

脳の神経細胞の配線図を明らかにする研究

▲ 「パーキンソン病やハンチントン舞踏病の治療法を見つけるには、まず脳の作動原理がどのようにデザインされているのかを解明することが重要」と語る藤山教授。

組織細胞学教室は、北大医学部開設当初に設置された第三解剖学講座をルーツとする歴史ある教室です。2020年、前任の岩永敏彦教授が退職され、後任に藤山文乃教授が就任しました。教室には中枢神経回路の研究をメインとする藤山教授のほか、岩永敏彦教授在任中から岩永ひろみ准教授・小林純子講師が在籍し、岩永准教授は齧歯類の頬ひげの動きや歯のかみ合わせを検出する機械受容器の研究を、小林講師は糖鎖とレクチンの機能形態の研究を展開しています。



「神経内科専門医として臨床に携わるなかで、パーキンソン病やハンチントン舞踏病の患者さんたちが、自分のイメージ通りに動くことが難しいのはなぜか?という疑問を抱くようになりました。逆に言えば、『私たちはなぜ思った通りに動けるのか?』という問いでもあり、その答えを見つけたいと思い基礎研究の分野に進みました」と語る藤山教授。



パーキンソン病の原因となるドーパミンニューロンは、運動調節だけでなく、報酬を基盤とした強化学習など、高次脳機能もコントロールしています。しかし、脳の神経回路は非常に複雑で、感覚、運動、認知、情動など、あらゆる要素が同時期に影響しあいながら機能しており、脳の全体像を把握することや、作動原理となるデザインを読み解くことは難しい状況にありました。

▲ 可視化された神経細胞の放射軸索

困難な状況に風穴を開けるきっかけとなったのが、解析技術の進化と実験手法の融合です。遺伝子組み替えウイルスベクタを用いた特異的ニューロン標識、共焦点レーザー顕微鏡やニューロルシダなどを用いた神経再構築、光遺伝学(オプトジェネティクス)を組み合わせたパッチクランプなど、最新の技術を導入することで、画期的な成果を得ることできました。そのひとつが、遺伝子改変ウイルストレーサーを用いて単一神経細胞の軸索を完全に可視化したことです。膜移行性シグナルを組み込んだ遺伝子改変ウイスルトレーサーを一つの神経細胞(ニューロン)に感染させ、投射軸索を完全に可視化することで、線条体に不規則に分布するパッチ(ストリオソーム)領域の神経細胞がどこに投射しているかを世界で初めて明らかにしました。
「これは、私が臨床時代からずっと知りたかったことで、従来イメージされていた軸索とは全く違う形をしていることがわかった時は大きな驚きがありました。これほど複雑な神経細胞が何百億もつながったネットワークを形成しているのが脳の全体像です。私たちの研究グループの目標は、脳に張り巡らされた神経細胞の配線図を隅々まで読み解き、さまざまな脳疾患・精神疾患に関係する神経回路の仕組みを理解すること。壮大なテーマですが、研究者魂を刺激する魅力的な分野だと思います」

国内外の共同研究者とともに神経科学の発展に取り組む

▲ 藤山教授、岩永准教授・小林講師を中心に、多彩な分野で研究を展開している組織細胞学教室
中枢神経研究グループには、前職の同志社大学から藤山教授とともに移籍してきた苅部冬紀助教、平井康治博士研究員、博士課程大学院生の角野風子さんらが、中枢神経系分野の大脳皮質-基底核-視床ループを中心にさまざまなアプローチで解析しています。
「形態学などの静的なアプローチには精緻さを追求できる利点があります。これに電気生理や光遺伝学などの動的なアプローチを組み合わせることで、包括的に脳の基盤図を解明できると考えています。さらにこうして手に入れた正確な地図をもとに、特定の神経システムが傷害される神経変性疾患の病態解明と治療応用に貢献したいと考えています」
2021年度には学術変革領域A「神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム(適応回路センサス)」の計画班として、2022年には4ヶ国で申請したHFSPのResearch Grantとして採択されており、国内外の共同研究をさらに発展させるべく研究に取り組んでいます。



大学院生の角野風子さんは、医学院博士課程とともに、脳科学研究教育センター「発達脳科学専攻」にも在籍し、体系的な講義・実習を体験するとともに、修士課程からのテーマである大脳基底核の中の特殊な神経領域とその入出力を解明しつつあります。
「大脳皮質-基底核-視床ループの線条体の中に特異的な構造を持つ部分があり、アクセルとブレーキの機能を持つ2種類の細胞への入出力に関するメカニズムの解明に取り組んでいます。大学で神経系の研究の面白さに出会い、どこまで解明できるのかを知りたいと思い藤山先生の研究室を選びました。自分が納得できる結果を得るまで、この教室で頑張ろうと思います」と角野さんは語ります。



▲ 共焦点レーザー顕微鏡などを使ってシナプスレベルの構造を解析

藤山教授は、「臨床医から基礎研究の世界に飛び込み、国内外の大学や研究機関で自由に研究できたことは、私にとっては無謀とも思えるほどの経験でした。しかし、自分が知りたいことを望むままに取り組めるのが研究職の魅力だと感じています。ですから、これからの若い人たちにも自由にのびのび研究に取り組める環境を提供したいですね」と語り、角野さんをはじめとする若い研究者のサポートにも力を注いでいます。

(取材:2022年7月)

世界トップクラスの研究者と情報交換するセミナーを開催

▲ 学術変革領域に採択されているチームでのオンラインセミナー

オックスフォード大学や京都大学、同志社大学の研究機関に在籍していた時期は、研究グループのメンバーとディスカッションすることが日常だったという藤山教授。現在も、中枢神経研究グループでは毎週対面でのミーティングを行っています。また、文部科学省の学術変革領域に採択されているチームでのオンラインセミナーを隔週で開催。国内のトップランナーが一堂に会し、最先端の話題について情報交換する場として非常に実りの多いセミナーとなっています。