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vol.14 神経薬理学分野

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学研究科 薬理学講座 神経薬理学分野

教授吉岡 充弘生理系

  • 1984年、北海道大学医学部卒業
  • 1989年、北海道大学大学院医学研究科修了(医学博士)、同医学部薬理学第一講座助手
  • 1989年、北海道大学医学部薬理学第一講座講師
  • 1989~1990年、中枢性セロトニン作動性神経に関する研究のため米ミシガン大学で研究に従事
  • 1991年、北海道大学医学部薬理学第一講座助教授
  • 1997年、北海道大学医学部薬理学第一講座教授
  • 1998年、北海道大学医学研究科薬理学講座神経薬理学分野教授に就任、現在に至る

人間の情動のメカニズムを解明し
精神疾患治療薬の開発・探索につなげています

不安や恐怖、衝動性、喜び、気分の落ち込みなどの情動は、人間をはじめとする多くの生物を特徴づける精神機能です。吉岡充弘教授率いる神経薬理学分野では、セロトニンを含むモノアミン神経伝達物質に着目し、分子生物学、免疫化学、免疫組織学、神経化学、電気生理学、行動薬理学、光遺伝学など多岐にわたる実験手法を用いた研究を行っています。

泉剛准教授泉剛准教授をリーダーとするグループでは、(1)恐怖条件付けモデルを用いた不安の研究、(2)慢性ストレスモデルを用いたうつ病の病態の研究などを主に行っています。不安の研究ではラットに不安や恐怖の記憶を植え付け、その記憶に基づく行動の観察や、セロトニン再度取り込み阻害薬(SSRI)の抗不安作用のメカニズムについて調べています。不安とセロトニンには深い関係性があると考えられており、研究ではSSRIが脳の扁桃体という部分に作用していることが解明されました。

吉田隆行助教吉田隆行助教が担当している研究では、(1)不安・恐怖などの情動を制御する神経回路の電気生理学的および形態機能学的研究、(2)幼若期ストレス負荷マウスおよび遺伝子改変マウスの情動機能変容の行動学的解析と神経基盤の解明に取り組んでいます。この研究でも扁桃体に着目し、神経細胞が活動した時に生じる電気信号を記録するパッチクランプ法という手法を用いています。動物が不安を感じているときの細胞のメカニズムに迫る研究として注目されています。

大村優助教大村優助教がリーダーを務めるグループでは、(1)光遺伝学を用いた不安・うつ・衝動性の神経メカニズム、(2)遺伝子改変マウスを用いた遺伝的背景と薬剤作用・副作用の交互作用の研究を行っています。光遺伝学的解析(オプトジェネティクス)は、近年注目が高まっている研究手法で、光受容体であるチャネルロドプシン2を特定の神経細胞(本研究ではセロトニン神経細胞)に選択的に発現させることで、特定種類、特定部位の神経活動を操作可能にし、行動との因果関係を同定します。
国内でも数少ない最先端の研究手法であり、名古屋大学や慶応大学の研究者と共同研究を行っています。最先端の脳科学研究に貢献し、教科書に新たな1ページを加える大発見につながるのではないかと期待されています。

チームプレーの中で多角的な視点を養い
研究者として成長することができます

吉岡教授は神経薬理学分野の特徴として「多彩な研究手法」をあげています。

「細胞1個のレベルから生体全体のシステムまでを一つのラボでトータルに研究できることが当分野の最大の特徴です。通常は各分野に特化して研究するものなのですが、ここではミクロからマクロまでのさまざまなスケールで実験や解析を行っています」

研究室には神経解剖学的解析、神経化学的解析、分子生物学的解析、電気生理学的解析(in vitro/in vivo)、光遺伝学的解析、行動薬理学的解析など幅広い研究手法と実験設備が整っており、医学部以外にも薬学部や理学部、文学部(心理学)、海外からの留学生などがチームプレーで研究に取り組んでいます。

「今は一人の研究者が立案、実施、論文発表を行うという時代ではありません。チームを組み、1+1が5や6になるような結果を出さないと世界と肩を並べることはできないのです。ですからチームワークは非常に重要です。本分野では細胞から生体システムまで多彩な領域のエキスパートを揃えており、コラボレーションする中で自分の専門分野以外の研究手法にも造詣が深くなり、批判的な見方ができるようになります。何事も鵜呑みにせず批判的に見る力を付けることは、研究者だけでなく臨床医にも必要なことです」

また、吉岡教授は大学院で学ぶ意義について「師」となる人物に出会うことが大事だと語っています。

「医師とは、一生学び続け、自分を磨き続けることが求められる仕事です。ですから、どの診療科を選ぶかよりも『この人に付いていこう』と思える師と出会うことが大切。大学院は人生の中では4年間という短い期間ですが、人間形成においてはとても重要な期間です。人生の師と出会い、研究のやりがいや面白さ、医師としての生き方などを学んでほしいと思います」

(取材:2016年2月)

理系文系を問わず幅広い分野から人材を募集

神経薬理学分野では毎年、大学院進学を目指す学生を対象に教室説明会を開催しています。研究テーマや研究手法についての解説をはじめ、教室の特徴、雰囲気などを伝え興味を持ってもらうことが目的です。過去には医学部以外にも薬学、文学、理学、歯学、栄養学、農学など学部から学生を受け入れた実績があり、多彩な人材によるコラボレーションが多数生まれています。