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vol.01 細胞生理学分野

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学研究科 生理学講座 細胞生理学分野

教授大場 雄介生理系

  • 1996年、北海道大学医学部医学科卒
  • 2000年、北海道大学大学院医学研究科 病理系専攻修了
  • 1998年より国立国際医療センター研究所で基礎医学研究をスタート、2001年から大阪大学微生物病研究所助手としてFRETバイオセンサー開発と蛍光イメージングの研究に従事。科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任)、東京大学大学院医学系研究科助手などを経て、2006年に北海道大学大学院医学研究科に異動、2012年医学研究科教授、現在に至る

生きた細胞を対象とした蛍光バイオイメージング手法で
シグナル伝達ダイナミクスの解明に取り組んでいます

細胞は外界の環境変化に対応するため、細胞内情報伝達(あるいはシグナル伝達)機構を持っています。細胞内シグナル伝達は、分子間の相互作用、リン酸化を始めとする翻訳後修飾、蛋白質の構造変化や酵素活性の変化の秩序正しい営みにより維持されています。さらに、その結果生じる遺伝子発現制御や細胞形態の変化などの表現形の発現を含め、時間的・空間的に厳密に制御されている点が重要です。大場雄介教授の研究室では、こうした細胞内でのシグナル伝達のメカニズムを解明するため、蛍光バイオイメージング技術を用いた研究を行っています。

「蛍光バイオイメージングは、細胞内のシグナル伝達を可視化する技術です。一般的には組織切片に蛍光抗体を反応させる手法が使われますが、私たちは緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein, GFP)あるいはフェルスター(蛍光)共鳴エネルギー移動(Förster/fluorescence resonance energy transfer, FRET)を用い、生きた細胞内でのタンパク質間相互作用や分子の構造変化、活性化状態などを時間的・空間的に捉えることを可能にしました」

運動制御と運動学習を制御する小脳のプルキンエ細胞の可視化
▲ FRETによるタンパク質(Ras)活性化のイメージング例

2010年、大場教授の研究チームは、北海道大学病院血液内科近藤健講師の研究チームと共同で、蛍光タンパク質とFRETの原理を利用した白血病の分子標的治療薬感受性試験の開発に成功しました

「これにより、薬を投与する前にその効果を予測できるようになりました。基礎研究にしか使われていなかった技術が初めて臨床に応用されたという点でも大きな成果につながったと思います」

さらに2013年11月には、インフルエンザウイルスが細胞に侵入するメカニズムを発見。医学界に大きなインパクトを与えました。

「細胞が外来因子に暴露されると、細胞内のRasが活性化され外来因子を取り込む過程(エンドサイトーシス)が亢進されます。私たちは 蛍光バイオイメージングを用い、デキストラン、トランスフェリン、インフルエンザウイルス粒子が細胞に取り込まれる様子を捉えました。また、インフルエンザウイルスが細胞に侵入する際、細胞内カルシウム濃度の一過性上昇が生じることも明らかなり、細胞内のカルシウムを抑制(キレート)すると、ウイルスの侵入と感染が著しく阻害されることも分かりました。今回の発見により既知の抗インフルエンザ治療とは違う、新しい概念での治療法開発につながるのではないかと期待しています」

自分が信じることを探究できるのが基礎医学の魅力
医学の常識を覆す発見と業績を目指しています

「蛍光バイオイメージングは、実際に起こっている現象を可視化できるのが大きな特長です。細胞は生きているので、刺激や処理に反応してタンパク質などの分子が変化します。その様子を自分の目で見ることができるのは非常に面白いと思います。医学系の研究室で、細胞が生きた状態でイメージングを行うところはまだそれほど多くはありません。他にはない角度から細胞の機能や生命の動作原理システムの解明に取り組めるのがこの分野の魅力です。蛍光バイオイメージングに興味を持つ学生が増えてくれると嬉しいですね」

ラボのメンバーが若く、多様なバックグラウンドを持った人材が揃っているのもこの分野の特長。薬学部、歯学部、理学部、工学部などから集まったメンバーは、互いに刺激し合い、得意分野を活かしながら、斬新で先進的なテーマに取り組んでいます。

「基礎医学の面白さは、自ら信じることを納得がいくまで探究できること。医学の常識を覆すような新しい発見をしたい、医学の世界を変えるような業績を残したいという意欲のある方は、ぜひ私たちの仲間になってほしいと思います」

(取材:2013年11月)

Seeing is believing (百聞は一見にしかず)   見て触れて感じるイメージングブートキャンプ

細胞生理学分野のスタッフがボランティアで続けている「イメージングブートキャンプ」は、学内外の学生・教員・研究者などを対象に、バイオイメージングの基礎的な技術やその有用性を体験してもらうための講習会です。実験結果などを紹介するとともに、機器の操作や実験方法なども体験してもらいます。参加者は、蛍光の色が変化する様子に一様に驚き、画期的な手法に興味をそそられているようです。このキャンプは年1回開催されています。