北海道大学大学院医理工学院

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医療基礎物理学分野 教授
合川 正幸
Masayuki Aikawa
研究者総覧

医理工学院 医療基礎物理学分野 教授
理学研究院 医理工連携教育推進室 教授
2002年 北海道大学大学院理学研究科 博士(理学)

研究領域:原子核物理学
教育領域:原子核物理学
研究テーマ:医療用放射性同位体生成断面積の測定

研究内容紹介

我々のグループでは、放射線治療や核医学検査など、医療分野で利用されている放射性同位体の生成反応断面積を系統的に測定しています。この研究は、理化学研究所及びハンガリー原子核研究所などの研究者とともに、国際的な共同研究として実施しています。
核医学などの医療分野では、時間経過とともに壊れる放射性同位体(Radioisotope: RI)が利用されています。RIが崩壊するときには、アルファ粒子(α線)、電子(β線)、光子(γ線)などを放出します。このような性質が医療に応用されています。例えば、がんに集積する性質をもった化合物にRIを付け、体内に投与した場合、RIが崩壊する際に放出されるγ線を測定することで、集積部位、すなわちがんがある部分を特定することが可能となります。また、RIがα線やβ線を放出するならば、集積した部分の近くにあるがん細胞を殺す効果が期待できます。このようにして、RIはがんの診断や治療などに利用されています。
RIの生成には原子核反応が必要不可欠です。RIは時間経過とともに壊れていきますので、目的とする医療行為に必要な量を適宜生成する必要があります。そのため、原子核反応によるRIの生成確率(反応断面積)は重要かつ基礎的なデータの一つと言えます。ただ、原子核反応によっては、実験データに誤差が大きい場合や一致しない場合など、信頼性が十分とは言えないデータが多く存在しています。医療で応用する以上、より誤差の小さい、信頼性の高いデータが求められています。そこで我々のグループでは、医療用RIの生成反応断面積を系統的に測定し、信頼性が高く、誤差も小さいデータを取得しています。
実験は主に理化学研究所で行っています。陽子、重陽子、アルファ粒子といった荷電粒子を加速器で加速し、標的に照射します。生成するRIにより、様々な元素を標的として利用します。荷電粒子が標的とぶつかると原子核反応が起こり、様々なRIがつくられます。生成されたRIは時間と共に壊れ、別の原子核に変わりますが、崩壊する時間、崩壊時に放出する粒子やそのエネルギーが異なります。特に、放出されるγ線のエネルギーを測定することで、生成された原子核を同定しています。測定したγ線の個数は反応断面積に比例しますので、最終的に生成反応断面積を得ることができます。 このように、医療用RIの生成反応断面積を実験的に測定することで、医療分野へ貢献しています。


主な発表論文等


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