教授あいさつ
何故私は救急医学を志したのか
救急医学と救急医療に興味を持つ君へ
丸藤 哲
北海道大学大学院 医学研究科
侵襲制御医学講座 救急医学分野 教授
気管挿管と蘇生にあこがれて麻酔科に入局し3年半ほど麻酔に専従したが,若気の至り宮本武蔵よろしく救急医療の武者修行を思い立った。
当時は交通事故の急増といわゆる患者のたらい回しが問題になっていたころであり,救急医療体制の基礎ができつつあった時代である。このような時代背景のなかで,東では日本医科大学救命救急センターが,西では大阪大学特殊救急部が華々しい救急活動を展開していた。
さて,どちらのお世話になろうかと思案したが,大阪府立病院で救急を行っていた北大麻酔科の先輩の「府立病院なら症例も多いし,職員になれるで」の一言で同病院救急医療専門診療科の門を叩いた。府立病院での桂田菊嗣救急医療専門診療科部長との出会いと救急医療の経験が私の救急の原点である。
2年間の在籍中に私は麻酔科医としてではなく,救急外科医として訓練を受け多くの救急手術に入り,同時に非常に数多くの救急症例を経験した。
この中で初療における救急蘇生と救急診断学,手術,その後の集中治療,後方病棟での治療から退院にいたるまで全てに自分自身が関ることのできる救急医療の面白さを学んだ。
もう一つ私は桂田部長が常に口にされていた「救急医療はシステムである」ことを学ぶことができた。桂田部長にお会いしたときに,どうして20数年も救急医療に携わることができるのかと不思議に思ったが,自分自身が当時の部長のお歳に近付き,20年近く救急医療をやってきて答えを出すことができた。
それは救急が好きだからである。
救急医学は内科系・外科系を問わず,すべての医者にとって応用編である。
自分で歩いてやってきて話すことのできる患者の診察,あるいは術前にすべてを検査してから望む定期手術等の基礎編と異なり,救急医学は意識障害があり,外科系・内科系疾患を併せ持ち,診断する前に治療を開始しなければ救命できない患者を相手にする医療である。
これは私の様な普通の日常診療では満足できず,何にでも興味がある人間にはぴったりの医療であると考えている。しかし,現在は単純に好きだから救急医を目指すと言う若者が少ないのも事実である。
諸君がテレビのERを見て救急は面白いと感じたとしよう。
さて,臨床実習で救急医が土曜日曜を含む月8回の当直を睡眠時間数時間でこなし,しかも当直翌日も勤務していることを知ったとたんにその気持ちが萎えてしまうのが普通なのかもしれない。
だが,我々救急医は自負を持ち働いていることを最後に諸君に是非伝えたい。それは,救急に興味を持つ我々が日本の救急医療体制を確立し,救急医学の基礎を創り上げたという自負である。
まさに日本の救急医療は,昼夜を問わず24時間365日体制で働く少数の情熱あふれる救急医により支えられているのである。
我々の救急医学分野は,若き先鋭達が誠心誠意込めて治療と教育と研究にあたる活気ある分野だ。
北の大地北海道で我々と共に救急医学の道を歩んでみないか!
私は君たちに夢と将来を約束する。