北海道臨床開発機構

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オール北海道で取り組むHTRの橋渡し

1.橋渡し研究の基盤整備
2.HTRデータセンター
3.教育への関与・人材育成
4.道内医療機関との連携
5.シンポジウム・セミナー活動
6.HTRから3大学のTRセンターへ
橋渡し研究-北海道大学
橋渡し研究-旭川医科大学①
橋渡し研究-札幌医科大学
橋渡し研究-浜松医科大学
橋渡し研究-旭川医科大学②

1.橋渡し研究の基盤整備[組織体制、スタッフ、環境構築、シーズ研究支援]

4年間のOJTを通した橋渡し研究の基盤整備

 平成19年8月にはじまった本事業。道内の3つの医育大学が協働で取り組む基盤整備事業は、各大学の強みを生かしながら、橋渡し研究の北の拠点を形成するという高い理想を掲げての歩みがはじまった。

組織体制、スタッフ―3年間の変遷

 HTRの組織立ち上げにあたっては3医育大学での協議が重ねられ、さらに当該事業を多方面から助言等を行う「運営委員会」が組織された。運営委員には、3医育大学、学外有識者、そして北海道の経済界からも有識者を迎え、第1回運営委員会が平成19年11月に開催された。
 組織は、橋渡し研究の推進全般に関する支援業務を担う「TR推進部」、シーズ研究の実用化に向けて臨床試験の計画や実施に関する業務を担う「治験管理部」を設置。TR推進部には、臨床開発企画・管理担当はじめ5つの担当を設置し、HTRの専任スタッフ及び3医育大学のスタッフが就いた。治験管理部には、生物統計はじめ4つの担当を設置した。また支援する研究の倫理面を検討する「倫理委員会」及び「利益相反審査委員会」を立ち上げた。連携機関として「札幌医科大学附属病院治験センター」「北海道大学病院高度先進医療支援センター」「旭川医科大学病院治験支援センター」が拠点形成に携わっていくことになった。  この体制で2年間の取り組みが行われたが、平成23年度末までの最終ゴールまで残り2年弱となった時期に、橋渡し研究のさらなる加速化に向け、平成22年度4月より「TR企画部」「HTRネット推進部」「臨床情報管理部(データセンター)」の3部体制へと変更した。
 4年目(平成22年度)は、当該事業の最終年度に向けて、HTRの後継事業のあり方について3医育大学で検討を重ね、平成23年4月に3大学それぞれTRセンター(「札幌医科大学トランスレーショナルリサーチセンター」「北海道大学探索医療教育研究センター」「旭川医科大学教育研究推進センター」)を設置した。
 HTR創設期の人員体制は、本間研一機構長(当時)のもと、各部長、副部長は3医育大学から、そして各担当には専任のスタッフも着任した。医師主導治験をメインで支援する専任スタッフには専門の知識が求められることから、全国規模で募集した結果、この3年間に優れた専門家が集結した。臨床開発企画・管理、安全性、品質管理、知財、薬事、生物統計、医師等の専門家が当該事業を推進してきた。さらに平成23年4月には、これまでの専門家に加え、新たにIT関係の専門家及びデーターマネージャーが加わり、生物統計部門での専門家の層を厚くしてデータセンターの体制を強化した。

橋渡し研究環境も着実に整備

 橋渡し研究を推進するHTRの環境整備も、この4年間に随時行ってきた。現在およそ200㎡を、北大医学研究科東北棟、中棟に充てて、専任スタッフが従事している。
 平成21年度に開設したHTRデータセンターには、各種重要書類を保管する書棚や施錠、室内を監視するカメラ等も設置し、セキュリティ対応を行った。その他、3医育大学間での協議事項をスムーズに行うため、ウエブ会議システムも導入した。本システムはインターネット回線を利用した会議システムで、大学が3カ所に分かれている地理的な不都合を克服した。

橋渡し研究体制の整備

 橋渡し研究を行う体制の整備について、まず、シーズ研究の評価、優先順位化、新規シーズ研究の発掘、採用のための「研究開発戦略会議」を立ち上げ、これらの会議をもとに、各種シーズの評価、採用等を進めている。またシーズ研究の開発を促進するための「研究開発推進会議」は、シーズ研究者とHTR専任スタッフが、開発に向けた対応を検討・協議する場として設けられた。またシーズ研究者向けの各種勉強会等を、即ちHTRは体外診断薬のシーズが多いことから、アドバイザリーボードメンバーによる勉強会を開催した。
 平成21年度には、シーズの評価、優先順位化に向けた基準を策定し、シーズの選択と集中、新規シーズ採用の評価を実施する体制を構築した。
 またプロジェクトマネージャー(PM)制を導入し、シーズの進捗管理、推進、さらに橋渡し研究の促進へとつなげる取り組みを行った。また、北大内のCPC(Cell Processing Center)のGMP化もHTR主導で行ってきた。そして平成22年度には、前述の会議等の中で、シーズの選択と集中、新シーズの探索・選定等を行った。
 さらに平成22年度には、27種類の医師主導治験標準業務手順書(SOP)を整備し、外部監査のGCP適格性調査を数回受け、医師主導治験の整備を行った。さらに、シーズの選択と集中、新シーズの採用を行って、計12シーズをHTRシーズとして支援している。3医育大学における今後新規に臨床開発可能な橋渡し研究候補シーズの調査(合計50件)を行い、新規シーズの発掘を実施した。

2.HTRデータセンター

治験に対応可能なセンター運営の構築

 平成21年4月より、HTRデータセンターが設置され、臨床試験(研究)における症例報告書の様式作成支援、 データベースの構築・管理、登録事務局業務などを行う体制を整備した。設置時に受託した具体的業務としては、医師主導治験1件、臨床試験2件、観察研究1件であった。また、医師主導治験を実施するために、GCPに準拠したSOPの整備を実施した。
 平成22年度には、センター業務を拡充するために「臨床情報管理部」が設置され、より機能的なセンター業務を遂行するための体制を整えた。具体的な業務として、HTRが支援している自主臨床試験の症例登録・割付業務、データマネジメント業務、症例報告書原本保管業務等を実施した。平成23年4月現在、4件の自主臨床試験(研究)の進捗管理・データマネジメントを支援している。また、上記業務に加えて、生物統計相談・教育も積極に行っている。2010年度は、16件の生物統計相談を受けた。データマネジメントに関する研究活動も開始し、日本臨床試験研究会において2件の発表を行った。

3.教育への関与・人材育成

HTRスタッフによる大学院修士課程のカリキュラム「基本医学総論」の開講

 HTRでは、教育プログラムを通して人材を育成し、橋渡し研究の人材面からの基盤整備も継続的に行っている。
 具体的には、伊藤准教授が、北海道大学医学研究科医科学修士課程のカリキュラムとして「基本医学総論:臨床試験方法論」、「基本医学総論:臨床試験データ管理学」を平成21年度から開講し、若手の人材育成を通した生物統計教育の普及に努めている。また本カリキュラムは、HTRデータセンタースタッフに対するGCP教育の一環としても位置づけられており、組織内教育にも役立っている。
 伊藤准教授による自主的な勉強会としては、平成20年度から続けられている統計学の輪読会、統計解析パッケージJMPの実習、カテゴリカルデータ解析に関する講義及び実習等を実施している。その他、生物統計学を専門的に学ぶ勉強会として、大学院生を対象に専門書の輪読会も実施している。
 これらの勉強会に参加していた学生の中から、西本特任助教が平成22年より着任、平成23年には江口特任助教が着任。HTRデータセンターの新戦力としてスタッフに加わってもらうことができた。
 また平成22年度より着任した林特任講師は、データマネジメントと並び、研究者へのGCP教育を実施し、今後さらにGCP教育システムの構築を図っていく。

4.道内医療機関との連携

3年間で北海道約230の医療機関と連携HTRネットワークの着実な取り組み
ウエブ会議システムを使った第1回PM会議 ウエブ会議システムを使った
第1回PM会議
HTRネット推進部会議 HTRネット推進部会議
 オール北海道の取り組みの特徴として、道内3医育大学で協働している強みを生かし、道内600余の医療機関との連携構築を目指してきた。これは北海道を国内最大級の治験推進基盤として捉え、そのネットワーク化を目的としたものである。
 本業務を推進するために、HTRの中村特任准教授が中心となり、全道の医療機関への連携呼びかけを行ってきた。具体的には、この4年間で各医療機関をまわり、「橋渡し研究事業」、「北海道臨床開発機構」の説明理解を促す渉外業務を実施した。がん拠点病院、エイズ拠点病院、へき地支援病院、災害拠点病院、臨床研修指定病院等を含め、北海道内に点在する医療機関に向けて、当該事業の理解と連携促進を目的とした渉外活動を行ってきた。
 具体的な取り組みとしておよそ270の医療機関と連携ネットワークを結ぶことができた。これら270の医療機関はHTRの連携医療機関として登録されており、各種情報がデータベース化されている。
 平成21年度からは、「HTRネット事業推進本部」が立ち上がり、当該事業を担うHTRの担当者が集まり、本間前機構長の指示のもとで、ネットワーク構築、及び当該事業の自立化に向けた可能性について検討することになった。この組織が基盤となり、平成22年度より「HTRネット推進部」として独立し、より明確に道内医療機関との連携体制構築に向けた業務と、自立化に向けた検討業務が推進されていくことになった。
 具体的な業務成果として平成21年度は、疫学調査等の実施受け入れに向けた臨床研究者用データベース構築の準備も進めてきた。これは、岡村特任助教が中心となってきた業務で、各医療機関の担当者、医療従事者等の情報を収集し、データベース化していくもので、平成23年度以降も引き続き行っていく予定である。
 一方、すでに登録済みとなった270の医療機関に向けて、これまでも「北海道MEDICALアリーナ」のサービスを通して有機的な連携関係の維持に努めてきた。例えば、医療従事者が離れた病院間で会議を実施したい時などに、HTRのネットワークシステムを活用してもらうなどのサービスを行ってきた。今後、利用率を高めるコンテンツづくりに力を入れる予定である。
 連携医療機関に向けては、今後もHTRと医療機関との有機的な連携を維持するためにニーズ調査を実施したところ、研究に関する生物統計への支援を求める声が大きかったことから、生物統計担当と連携をとり、H22年度から登録医療機関の従事者に向けた生物統計アドバイスのサービスを開始した。 HTRネットのデータベースを活用して医師主導治験等への患者リクルート支援もスタート  前述した北海道の医療機関ネットワークに関して、これを活用した臨床研究支援、患者リクルート支援等の取り組みも、平成22年度から徐々に始動した。
 4年間で構築してきたデータベースによって、登録医療機関の各種情報は希望・目的別に検索することができ、ヒットした医療機関情報を、患者リクルート等に活用することができる。これまでの活用例としては、TRIが実施している臨床試験2件について、参加医療機関を募る情報を発信。これまでに循環器関係の治験参加呼びかけには、データベースで検索した125医療機関に呼びかけをした結果、4医療機関から参加申込みがあった。その他、製薬企業から臨床研究への参加医療機関探索について共同研究をすすめたり、北海道庁からも、14支庁別登録病院のデータ登録の依頼があったり、徐々にHTRネットのデータベースへの期待と依頼が発生してきている。  当該データベースを活用する特長としては、登録病院から対象となる病院検索がすぐできること、依頼から報告用の資料作成までは数日で完成し、2~3週間で登録医療機関とのやりとりを遂行。依頼機関とのやりとりを含めると、ほぼ3~4ヶ月で業務を遂行できるまで体制を整えている。今後も当該データベースの整備をさらに行っていく予定である。

5.シンポジウム・セミナー活動

シンポジウム、セミナー活動を通してHTRの取り組みを社会に発信

 HTRでは、毎年、当該年度の活動報告等を行うシンポジウムを開催している。
 初年度は平成19年度2月に、「北の大地から明日の医療への橋渡し」と題して行われた。初年度であることから、北海道臨床開発機構の紹介や、オール北海道橋渡し研究に期待すること、また橋渡し研究の紹介などが行われた。特別講演として、東京大学の大橋靖雄教授による「臨床試験と臨床統計」があり、橋渡し研究における生物統計の重要性等についてご講演いただいた。3医育大学による大がかりな橋渡し研究施設の誕生に、13社のテレビ局、新聞社等が記者会見に来場し、当該事業への期待の大きさを実感した。
 2年目は「橋渡し研究支援~未来への架け橋」と題して実施。HTRの1年間の活動報告のあと、岡野光夫東京女子医科大学教授による「再生医療の実現に向けて」、黒川達夫千葉大学大学院教授(元厚生労働大臣官房審議官)による「今後の医療情勢と医薬品への期待」と2題の特別講演を行い、それぞれの立場からご講演いただいた。
 3年目は「橋渡し研究のゴールを目指して~医師主導治験の開始~」と題して行われた。HTRの1年間の活動報告のあと、大村昭人帝京大学医学部名誉教授による「医療立国論:崩壊から再生へ」と題したご講演をいただいた。これまで3回は、道内の連携医療機関に向けてシンポジウムの様子をウエブで配信する取り組みも行ってきた。
 そして4年目の平成22年度は「持続可能な橋渡し研究拠点形成に向けて~オール北海道プロジェクトの飛躍~」と題して、今後の事業の方向性について各講演者から示唆に富んだ発表をいただいた。  セミナー活動では、HTRのシーズ研究者に向けた体外診断薬勉強会やTRセミナー、GMP/CMC研修も随時行ってきた。
 またHTRの取り組みを理解してもらうためのセミナー講演も実施した。平成21年度は、未来創薬・医療イノベーションセミナーにおいて、永井特任教授、稲毛特任准教授、伊藤准教授のHTRスタッフが、セミナー関係者に向けて橋渡し研究の取り組みについて発表を行った。
 これらシンポジウム、セミナー活動を今後とも実施し、HTRの取り組みを広く社会に理解してもらうことを心がけていく。

様子

①第1回オール北海道先進医学・医療拠点形成シンポジウム(2008年2月22日)
②体外診断薬勉強会(第1回:2008年8月13日・第2回:2008年9月5日)
③第2回オール北海道先進医学・医療拠点形成シンポジウム(2009年1月30日)
④第1回TRセミナー(2009年2月6日)
⑤GMP/CMC研修・アドバイザリーボードミーティング(2009年2月18日)
⑥HTR講演会(2009年7月17日)
⑦第3回オール北海道先進医学・医療拠点形成シンポジウム(2010年1月27日)
⑧第6回未来創薬・医療イノベーションセミナー(2010年3月2日)
⑨第4回オール北海道先進医学・医療拠点形成シンポジウム(2011年1月21日)

6.HTRから3大学のTRセンターへ

オール北海道の橋渡し研究の未来に向けて

 北海道臨床開発機構は、事業開始時からのミッションである2件の医師主導治験への移行については、すでに1件を行っており、もう1件も準備を行っており、平成23年秋には成し遂げられる。また高度医療や非臨床へのシーズ研究支援も進められ、HTRシーズ、新規インキュベーションシーズとも含めて、支援シーズ研究が、橋渡し研究支援組織に向けて常に流れ込んでいる体制を、少しずつ構築してきている。
 そして今、この北海道に築かれたTR拠点を永続的に発展させるために、本年4月に3大学でTRセンター「札幌医科大学トランスレーショナルリサーチセンター」「北海道大学探索医療教育研究センター」(学内共同教育研究施設)、「旭川医科大学教育研究推進センター」を設立した。当該センターでは、HTR事業で培った橋渡し研究支援のノウハウ等をさらに発展・シームレスに継続させ、TRネットワークを拡張させていく予定である。

橋渡し研究-北海道大学

平成22年から医師主導治験への本格取り組みの支援事業を開始 三浪明男教授(北海道大学TR02)「新規人工手関節の開発と臨床応用」

 当該事業におけるミッションのひとつとして、5年間で2件の治験への移行が掲げられている。その1件目となるのが、北海道大学整形外科学分野、岩崎倫政准教授の「新規人工手関節の開発と臨床応用」である。
 本研究では、医師主導治験において、関節リウマチの患者に対し、高度の機能不全に陥った手関節を新規人工手関節で置換することによりその有用性を確認する。本治験により得られた結果を承認申請データとして使用し、医療機器の実用化へと結びつけるのが目的である。本治験は、平成21年10月末年に治験届を提出、平成22年3月上旬に最初の症例が登録され、本格的な実施段階に入った。
   本研究に対しHTRは、特許侵害可能性評価など知財権に関わる支援の他、GCP基準に則った医師主導治験の準備および実施のため、「自ら治験を実施する者」が行うべき種々の業務の支援・代行を行ってきた。すなわち、前治験責任医師である三浪明男教授・現治験責任医師である岩崎准教授を中心として、治験分担医師、実施医療機関の治験事務局および治験協力者、治験審査委員会(IRB)事務局、治験機器提供者、モニター、業務委託先、ならびに規制当局(PMDA)等、各方面の関係者と密接な連携を保ち、各種業務を推進してきた。具体的には、治験実施計画書、同意説明文書、治験機器概要書、症例報告書様式、手順書・マニュアルなど、本治験に実施に重要な役割を果たす各種文書の作成支援および版管理などの文書管理の支援、ならびに関係者間の連絡・調整などを行った。またPMDA対面助言の支援、IRB審査への対応、治験届の代行なども行った。これらのHTRの取り組みを通して、本研究における臨床段階への橋渡しが本格化した。今後とも引き続き本研究への支援推進を実施していく。

医師主導治験概要 三浪明男教授
医師主導治験概要
予定期間:2013年6月迄。目標症例数:20例。
主要評価項目:Wrist Scoring System by Figgie。
副次評価項目:有効性、安全性。治験施設:2施設。
岩崎倫政准教授/
北海道大学大学院医学研究科
機能再生医学講座整形外科学分野

橋渡し研究-旭川医科大学

2件目の医師主導治験を平成23年度に開始予定 松野丈夫教授(旭川医科大学TR01)「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの橋渡し研究」
伊藤 亮教授 松野 丈夫教授/
旭川医科大学医学部
整形外科学講座 治験機器(新規人工股関節)の概要 技術名/特徴
①Ti-15Zr-4Nb-4Ta/
 生体為害性の低下
②粉末積層造形/
 多孔質表面剥離の低減
③GRAPE Technology/
 インプラント-骨間の強力な固着
 人工関節の最大の合併症である「ゆるみ」が発生しなくなる人工関節開発を目的に、新たなチタン合金(Ti-15Zr-4Nb-4Ta)を材料とし粉末積層造形によって新たな金属多孔質表面を作製しGRAPE Technologyによって表面処理を施すことで新規人工股関節が開発された。
 この新規人工股関節を用いて行われる医師主導治験が、旭川医科大学整形外科学講座・松野丈夫教授の「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの橋渡し研究」である。
 平成22年5月より医師主導治験を開始するための準備を開始し、これまでに治験実施計画書の作成支援を行い、平成23年3月にPMDA対面助言を行い、平成23年8月治験届、9月被験者登録開始の目処付けを行った。また、治験実施医療機関の治験実施体制を整備するため、SOPの作成・改訂、治験調整事務局設置・運営の支援等を各関係者と連携しながら構築してきた。
 また、北海道臨床開発機構が策定してきたSOPも見直しを図り、27SOPのうち16SOPを改訂し、1SOPを廃止、1SOPを新たに制定した。今後もGCP改正に応じたSOP改訂支援を行う予定である。さらに治験関係者へGCPの観点から教育指導を行った。

橋渡し研究-札幌医科大学

当該医療技術開発のための試験デザインを作成支援 本望 修教授(札幌医科大学TR01)「脳梗塞後の骨髄間葉系幹細胞の静脈内投与による再生医療治療効果向上のための技術開発」
本望修特任教授 本望修教授/ 札幌医科大学
医学部附属フロンティア医学研究所
神経再生医療学部門
札幌医科大学CPC内細胞調製ユニット 札幌医科大学CPC内細胞調製ユニット
 脳梗塞は年間約40万人が新たに発症し、後遺症を患う患者は国内に140万人も存在すると言われている。本研究は、この脳梗塞の患者12症例に対して、患者本人の骨髄幹細胞を静脈内に投与する臨床試験を行い、優れた機能回復の効果が認められている。自己細胞を用いていることから、拒絶反応を伴わない体内組織再生を実現する画期的な医療手法(自家移植)として期待されている。この方法により、従来、治療が困難であった難治性の脳神経疾患の革新的な治療技術として、いち早く実用化に結びつけていくことを目指している。
 本シーズは、平成21年度までは北大のCPC施設を利用しており、HTRで当該施設のGMP化支援を行った。その後札幌医科大学が新たにCPC(4ユニット)を建設したことから、今後は同大学で調製を行うことになり、HTRとしての当該業務の支援は終了している。
 平成21年度からは、HTR生物統計担当の伊藤准教授がプロジェクトマネージャーとなった。伊藤准教授は、九州大学から提供を受けた脳梗塞患者コホートデータの解析及びその結果に基づく臨床試験デザインの立案に対する支援を行った。今後とも生物統計面での支援を中心に行っていく。
骨髄間葉系幹細胞を用いた脳梗塞治療

橋渡し研究-浜松医科大学

医療機器支援の経験を生かし、道外研究者への支援も実施 山本清二准教授(浜松医科大学TR01)「低侵襲手術支援システムの実用化開発と臨床研究」先端医療開発特区(スーパー特区)課題
山本清二准教授 山本清二准教授/
浜松医科大学光量子医学研究センター
内視鏡手術ナビゲーター 内視鏡手術ナビゲーター
 HTRの医療機器支援の経験を生かして、道外の研究者である浜松医科大学の研究も支援している。
 本研究は、補助めがねなしで立体視でき、両手を自由に使える「顕微鏡手術の操作感覚で使用できる新規立体内視鏡」に「マクロの内視鏡手術ナビとミクロの超音波による局所ナビ装置」を組み合わせた、より安全・安心な低侵襲手術に貢献するシステムを開発し、実用化することを目的としている。
 HTRでは、プロジェクトマネージャーである伊藤准教授及び稲毛特任准教授が中心となって支援業務を実施している。まず侵襲性を伴わない医療機器であるため、非臨床試験データのみでの承認申請を目指し、薬事行政・申請担当の稲毛特任准教授が中心となって各関係者との調整を行っている。
 具体的には、開発のもっとも進んでいる「内視鏡ナビゲーター」について、PMDA対面助言を含めた今後の開発の進め方に関して、研究者、共同開発企業、及びスーパー特区対応部門との協議を実施した。現在本品の承認申請に必要と考えられるデータパッケージの検討、現状の保有データの精査、申請資料に盛り込む理論構築等を通して、効率的な開発推進を薬事戦略上の面から支援し、平成23年度には承認申請を行う。
 平成22年からは、医療機器開発品の性能等を確認する非臨床研究のデータ信頼性確保のために、HTRがデータの信頼性調査を実施していく。今後とも本シーズの支援を積極的に推進していく。

橋渡し研究-旭川医科大学

旭医、札医、北大の3大学で臨床的検証の実施支援 伊藤 亮教授(旭川医科大学TR02)「エキノコックス症(多包虫症、単包虫症)の鑑別用診断キット開発と臨床応用」
伊藤 亮教授 伊藤 亮教授/
旭川医科大学医学部寄生虫学講座
鑑別用診断キット
 本研究では、難治性の寄生虫疾患である多包虫症、単包虫症に関する迅速、簡便、かつほぼ100%の信頼性のある体外迅速診断キット(イムノクロマトグラフィ)を開発する。多包虫症に関しては流行地(北海道)住民検診、確定診断、さらに北海道旅行歴、居住歴のある膿胞性病変を有す肝疾患患者さんの確定診断法として全国の病院でベットサイドでの利用、さらに海外での住民検診、確定診断法として汎用させる。また、単包虫症に関しては、流行地の住民検診、患者さんの確定診断法として利用することを目的とする。
 旭川医科大学が独自に開発し、すでに国際的な外部評価が確立している遺伝子組み換え特異抗原Em18ならびに AgB (rEm18、RAgB)をそれぞれ多包虫症、単包虫症に用いる従来のルーチンの検査法(イムノブロット、ELISA:米国疾病対策情報センターで2010年から米国住民健診、確定診断法として採用したい旨の連絡あり)と同等の信頼性を有するイムノクロマト法の開発が目的である。特別な施設、専門家による従来の時間を要する検査法ではなく、住民、患者さんが受診している時間内にリアルタイムで誰でも簡単に検査結果を出せる迅速キットの開発と普及は時代の要請にマッチするものである。特に、多包虫症は北海道の地方病であり、まさに北海道に特異的な研究である。多包虫症は中国、モンゴル、ロシア、中央アジア各国からヨーロッパ各国、アラスカで流行し、単包虫症は牧畜が盛んな全世界で流行しており、対策、特に早期診断、早期治療に役立つ信頼性の高い診断法の導入が検討されている疾患である。
 本研究キットは、医療現場で使いやすいイムノクロマトで、また病態と相関した検出感度を持ち、現在世界最高水準と評価されている。微量の新鮮血(血清を分離する必要なし)で20分以内という短時間で高感度にエキノコックス症かどうかを診断できる。さらに定量化が可能であり、予後判定にも非常に有効である。それだけにできるだけ早く本キットの商品化にこぎ着けられるよう、HTRが開発戦略を作成し、海外への展開等を含めた知財戦略の検討を行っている。
 昨年度からは、旭医、札医、そして北大の3医育大学病院で臨床研究を実施し、有用データの蓄積を進めている。今年度は高度医療に申請するよう支援を行う。
 その他、この間には研究プロトコルの作成アドバイスも実施している。今後も引き続きデータ蓄積に向けた臨床研究への支援を行っていく。
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