共用試験CBTとOSCE

教務副主任 宮坂 和男


  1. 共用試験とは
     臨床実習開始前に学生の知識・技能・態度を評価する全国共用試験の導入が 予定されている。共用試験の目的・趣旨は知識・技能・態度・適正に優れた良 質の医師を養成する事にある。医学生が臨床実習で患者に接し、医行為を行う 診療参加型の臨床実習 (クリニカルクラークシップ) へ転換するには、臨床 実習開始前に基本的医学知識 (基礎医学、基本臨床医学、社会医学) ・技能・ 患者との基本的コミュニケーションを知っておく事が必要との認識に立ってい る。又、臨床実習に参加し患者に接する学生が一定の能力を有する事を社会に 保証する事にもなる。厚生労働省は平成3年に、医学生の臨床実習を促す為、 医行為に関し積極的な考えを示した。それによると、"安全対策を考慮し、大 学が学生の能力を評価した上で、患者に同意を得て、患者に被害が及びにくい 医行為を指導医の下で実施できる"としている。 試験は共通基準を設けた組 織的評価を行う為に、モデル・コア・カリキュラムに基づき、全国各大学が参 加して試験問題を作成する。知識の評価にはCBT (Computer Based Test) を、 診察技能・態度の評価にはOSCE (Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験) を用いる。基本的な臨床能力の確実な修 得を目指している。

  2. コア・カリキュラム
     基本的な医学教育内容を踏まえたモデル・コア・カリキュラム (教育内容 ガイドライン) が、平成13年3月に 「医学における教育プログラム研究・開 発事業」 委員会から提示された。膨大となった学習内容を従来の教育手法を 用いて履修する事は不可能なので、臨床医学を行う際に基本的な医学知識を押 さえて置く必要がある。このガイドラインでは各大学が編成するコア・カリキュ ラムの参考となるように現時点で修得すべき基本的教育内容が提示されている。 コア・カリキュラムは医学生に対するminimal requirementであり、医学生が 身に付けておくべき普遍的な医学的知識・技術・態度とみなすことができる。 一方で医学・医療分野が多様化し医学部出身者が基礎・臨床医学、地域・社会 医学、医薬、国際協力等様々な領域で必要とされている。21世紀医学・医療懇 談会第1次及び第4次報告においては、医学的教育の内容について、“精選さ れた基本的内容を重点的に履修させるコア・カリキュラムを確立すると共に、 学生が主体的に選択履修できる科目を拡充する事が必要”と提言している。従っ て、各医科大学のカリキュラムは、その教育理念に基づき決定すべきであるが、 モデル・コア・カリキュラムにあるような内容のコア・カリキュラムを2/3程 度、残り1/3を大学の教育理念や特色に基づいた内容とする事が妥当と考えら れている。後者は選択的カリキュラムとし、学生が自主的に選択できるような 基礎医学・生命医科学・社会医学・臨床医学・国際協力他様々な内容が含まれ る。

  3. CBT
     知識・思考力 (問題解決能力) を問う試験で、多肢選択式 (Multiple choice question) を採用する。コンピュータを活用し、プール問題から無作 為に設問を選択する試験である。数万題の問題をプールし、コンピュータに入 力する。今年度は全国各大学から約10000題が寄せられブラッシュアップされ ている。精選された問題が、毎年集積される。受験生は、各大学のコンピュー タ端末を用いて数100題の問題を解く。試験問題は無作為に端末へ配信される ので、隣同士の受験生の問題は異なっている。出題範囲はモデル・コア・カリ キュラム項目に準拠している。大項目でくくると、A:医師としての素養に関 わる基本事項、B:医学一般、C:人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、 治療、D:全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療、E:診療の基本、F: 医学・医療と社会、等が含まれる。CBTは自由に利用できる。例えば各大学独 自の評価との併用や、進級への利用などである。複数回実施も可能である。  将来的なスケジュールでは平成14年2月から5月にかけて試行的運用を開始し、 以後試験運用を続け、早い大学では平成17年の4年生終了時に本格実施に入る。 北大医学部では5月に5年生20名に対して試行的なCBTを実施する。その為に 試験問題管理用サーバー1台と受験用端末10台が購入されネットワーク環境で 作動する事が確認されている。

  4. OSCE
     技能・態度を客観的に評価する臨床能力試験である。OSCEは複数のステーショ ン (試験場) を使用して、1ステーションあたり5分から10分程度の時間内 に臨床能力 (問題解決能力、態度・技能) の評価を行う試験である。北米の 伝統的な医学校における経験で、評価者・学生双方から、臨床能力の評価法と して有用であると支持されている。OSCEの課題例としては、医療面接、バイタ ルサイン、頭頚部診察、胸部診察、神経診察、小外科 (ガウンテクニック、 消毒、縫合) 等がある。OSCEの実施時期は卒前教育 (臨床実習前、臨床実習 終了時、卒業認定等)、医師国家試験、卒後臨床研修 (研修医採用時、臨床 研修終了時など) 等がある。 共用試験におけるOSCEでは臨床実習に入る前 の評価であり、課題はごく基本的なものに限るとされている。課題は予め20程 度設定し、その内から5課題程度を選択して実施する。1課題 (ステーショ ン) 5分程度とする。評価者は当該大学教員だけでなく、他大学・施設の教 員(医師) も加える、OSCEも平成13年度に試験的導入を開始する。

  5. 北大医学部卒試でのOSCE
     北海道大学医学部では昨年度、6年生20名に対してOSCEが試行的に行われて いる。今年度のOSCEは、11月12日 (月) に卒業試験の一環として施行された。 試験会場は生理・薬理学実習室を使用した。試験会場には6ステーションが3 列の計18ステーションが設置された。受験生110名を6グループに分け、午前・ 午後各3グループ、1グループ1時間のスケジュールで試験を行った。受験生 1人が1列6ステーションを順次ローテートする。ステーション1は頭痛を主 訴に来院した患者の医療面接、ステーション2はその身体診察、ステーション 3は模型の眼底検査所見を口頭で述べる。ステーション4は咽頭痛と発熱を主 訴に来院した患者の医療面接、ステーション5はその身体診察、ステーション 6は医療面接と身体診察の情報から検査計画を筆記解答する。ステーションで の評価時間は何れも5分を制限時間とした。午前の部、午後の部の最後に評価 者から受験者に対するフィードバック (講評) が行われた。模擬患者には4 年生約40名がボランテアとして協力した。模擬患者の演技は大変良かったと思 う。評価、進行、患者誘導などは臨床各科の教官計64名の協力で行った。 受 験生110名と多数を対象としたOSCEは最初であったが、ほぼ予定時間通りに順 調に進んだ。トラブル無く、午後4時過ぎに無事終了した。


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