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vol.15乳腺外科学教室

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北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
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北海道大学大学院医学院 外科学講座 乳腺外科学教室

教授山下 啓子外科系

  • 1986年、名古屋市立大学医学部卒
  • 1996年、米国Uniformed Services University of the Health Sciencesに留学
  • 1999年より名古屋市立大学臨床研究医。同大助手、講師を経て2005年より名古屋市立大学大学院腫瘍免疫外科学助教授、同大学病院乳腺内分泌外科部長
  • 2012年、北海道大学病院乳腺・内分泌外科(2013年、乳腺外科に改称)教授として赴任、現在に至る

乳がんの8割を占めるER陽性乳がんの予防と治療法の研究に取り組んでいます

日本の女性がかかる悪性腫瘍の筆頭に挙げられる乳がん。その罹患率は、ここ20年で3倍と上昇の一途をたどっています。こうした現状を背景に2012年、医学研究科に、乳腺外科学教室の前身となる乳腺・内分泌外科学分野、北海道大学病院の診療科には乳腺・内分泌外科(現在の乳腺外科)が誕生し、初代科長に山下啓子教授が就任しました。

以来、国立大学では希少な乳腺単独の講座として、乳がんを主に研究と診療を一貫で行い、診療においては、全診療科および放射線部、病理部、超音波センター、腫瘍センター(化学療法部、緩和ケアチーム、がん相談支援センターほか)、臨床遺伝子診療部、外来治療センターなどと連携し、万全のチーム医療で、予防、診断、国内の乳がん専門医による「診療ガイドライン」に沿った標準治療(国内外の専門家が現時点で最善と認めた治療法)を行い、実績を積んできました。

ER陽性乳がん
▲乳がん組織におけるERの発現。がん細胞の核に染色陽性となる

乳がんの8割を占め、年々増加し続けるタイプが、女性ホルモン「エストロゲン」の影響で発症、進行するエストロゲン受容体(以下ER)陽性乳がんのみであることを、教授就任の前年に突き止めたのが山下教授です。私たちを取り巻く30年来の環境の変化が、乳がん増加の要因と分析し、「乳腺外科を専門としてからライフワークとしてきた研究の重みを感じ、一層頑張ろうと心に決め、北大に赴任しました」と振り返ります。

現在は、「ER陽性乳がんの生物学的特性と宿主の要因に基づいた適切な治療法の開発に関する研究」「ER陽性乳がんの発症メカニズムの解析:易罹患性の同定と発症予防へ」などのテーマで研究を進めています。前者は、がんの再発を抑制するための抗がん薬の服用中に再発をきたした症例など、治療効果の上がらない患者さんの要因を突き止め、一人一人に合った治療法や再発予防の開発を目的とし、後者は、ER陽性乳がんの危険因子を見極め、あらかじめ高罹患群(罹患しやすいグループ)を選別する予測モデルを構築して発症予防に繋げる目的で行っています。

高罹患群予測モデルの研究では、教室初の大学院生、郭(カク)家志(カシ)さんが「日本人女性におけるER陽性乳がんの罹患リスク予測モデルの構築」をテーマに、40歳以上の閉経前後の女性を対象に罹患リスクを予測するベストモデルを作成し、博士論文は2017年、厳正なピアレビューを経て、オープンアクセスの米医学雑誌「Oncotarget」に掲載されました。

unmet needs(未解決の医療ニーズ)に直面する臨床医こそ基礎研究が欠かせません

教室で行っているのは、患者さん一人一人の情報や乳がん組織、血液サンプルを用いて行うトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)が基本です。

ER陽性乳がん
全自動乳がん検診システムの開発と乳がんの発症予防へ
蓄積された画像データを解析することにより発症予防の研究に繋げる

患者さんを診療していると、何をやっても効かないなど、解決できていない部分が見えてきます」と山下教授。こうしたunmet needsへの解決方法を考えて、大学院で研究を行うことは、臨床医にとって貴重な体験と強調します。「リサーチマインドを持ち、疾患の本質を見極める目を大学院で養う。がん治療の作用、副作用や薬のメカニズム、分子標的薬などの最先端治療を理解できてこそ、患者さん一人一人に合った質の高い診療が提供できます。日進月歩で改訂される標準治療を適切に行うためにも基礎研究は欠かせません」。

発症予防の研究のもうひとつのアプローチとして、現在、新発想の 全自動乳がん検診システムの研究開発を産学連携で進めています。うつぶせになり、水を張った検査容器に乳房を浸して360度の方向から超音波を当てるだけで、乳腺内の微細な変化まで可視化できるのが特長で、2020年頃の完成を目指し、ヒトの乳がん組織を用いて試作機での実験を続けています。完成すればマンモグラフィーの弱点を補う“簡便、無痛、高精度”な検診が実現します。「レントゲンのように特別な設備や技師もいらず被ばくもない。薬局やスーパーマーケットで、だれもが気軽に利用できるよう普及させるのが夢です」と山下教授は目を輝かせます。

一方で「他分野との連携で画像診断技術の開発が進めば、北海道大学のシーズ創出にもつながる」と期待します。「女性ホルモンが影響するタイプの乳がんは、発症が顕在化するまでに20年、30年とかかります。画像診断技術を駆使して微細なシグナルを解析し、がん化の兆しをいち早くとらえることができれば、乳がんの増加に歯止めをかけられます」。

(取材:2017年11月)

乳腺外科医のネットワーク「北大乳腺の会」に参加しませんか

北大乳腺の会メンバー ▲第25回日本乳癌学会学術総会に集う「北大乳腺の会」メンバー
(2017年7月福岡)
2014年、当教室と地域の中核病院などで乳がん診療に携わる医師による「北大乳腺の会」を立ち上げました。孤軍奮闘する乳腺外科医が、互いを相談相手として連携を深め、多施設共同の臨床研究を行い、診療の質の向上につなげています。乳がんに興味を持つ初期研修医が参加を機に乳腺外科に入局し、大学院で学んでくれるとうれしいです。 ▶第25回日本乳癌学会学術総会に集う「北大乳腺の会」メンバー
(2017年7月福岡)