北海道大学 医学部医学科|大学院医学院|大学院医理工学院|大学院医学研究院
メニューを開く
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる

vol.10 医化学分野

  1. HOME
  2. 医学院
  3. Research Archives
  4. 生理系
  5. vol.10 医化学分野
北海道大学大学院医学院の教員・教室を紹介します
vol14メイン画像

北海道大学大学院医学研究科 生化学講座 医科学分野

教授畠山 鎮次生理系

  • 1990年、北海道大学医学部医学科卒
  • 1994年、北海道大学大学院医学研究科 病理系専攻修了
  • 1994年より米国ワシントン大学で細胞死(アポトーシス)の研究やノックアウトマウスの作製を行い、1995年から米国国立がん研究所で「ユビキチン化」の研究を始める
  • 1997年に九州大学生体防御医学研究所助手として帰国し、細胞周期とユビキチン化の関係の研究に従事
  • 2000年、同研究所助教授となる
  • 2004年に北海道大学大学院医学研究科教授として赴任し、現在に至る

ユビキチン化の特性を探り
がん治療へつなげる研究に取り組んでいます

1953年、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの二重らせんに関する論文を発表して以降、分子生物学研究は華々しく発展しています。じつは同じ年、この派手な分子生物学的発見の裏でもうひとつ大きな出来事がありました。「エネルギー(ATP)依存性のタンパク質分解」に関する発見です。DNAが「生命の設計図」として世界中の注目を集めるのに対し、こちらは細胞内のタンパク質を分解させるという正反対の現象であるため、関心を持つ研究者は少なく、数十年のあいだ闇の中に放置されているような状態でした。医化学分野の畠山鎮次教授は、そんな闇の中を探求し、DNA研究にも劣らない輝かしい業績を上げている一人です。

「普通、物質が分解・崩壊する過程ではエネルギーは必要とされないのですが、ユビキチンというタンパク質が結合した分子では、あえてエネルギーを使ってタンパク質を分解させています。これをエネルギー(ATP)依存性のタンパク質分解と言い、特定の酵素によってユビキチンが結合することを『ユビキチン化』と呼びます。わざわざエネルギーを使ってタンパク質を壊すというのは、従来の物理的・生物学的概念を覆す大発見です。当初はまったく注目されませんでしたが、その後の研究の結果、非常に興味深い特性が次々と発見されています。私の研究仲間であるアーロン・チカノーバー博士(Aaron Ciechanover:テクニオン・イスラエル工科大学医学部教授、ラパポート医学研究所教授)は、ユビキチンが仲介するタンパク質分解の発見に関する研究で2004年にノーベル化学賞を受賞しています」

TRIMファミリーユビキチンリガーゼによる選択的基質識別メカニズム
▲ TRIMファミリーユビキチンリガーゼによる選択的基質識別メカニズム

また、ユビキチン化と生化学的反応においては親戚関係にある「オートファジー」も最近注目されており、オートファジーを発見した日本人研究者が2014と2015年のノーベル医学・生理学賞の候補になっています。

「ノーベル化学賞や医学・生理学賞にノミネートされる研究者の中には医学部出身の研究者が少なくありません。基礎医学は地道な研究ですが、そこで培われた知見は大きく世の中を変える医療イノベーション創出に貢献する可能性があり、医学を学んだ人にはぜひとも挑戦してほしい分野です」

さらに最近の研究により、ユビキチンはタンパク質の分解だけでなく、細胞周期・シグナル伝達・DNA複製・神経変性疾患・免疫応答などのさまざまな生命現象で重要な役割を果たしていることが分かってきました。畠山教授は、ユビキチン化に関連すると考えられている約700の酵素の分類と、その機能やメカニズムについて研究を続けており、これらの研究はがんの予防や治療に役立つ可能性が高く、大きな期待がかけられています。

若いうちから研究に専念できる恵まれた環境
大学院進学は幅広い進路につながります

医化学分野の研究室には、医学系以外にも薬学や農学分野の学生も所属しています。また、学部学生も多数出入りし、早い段階から研究の現場を体験することができます。これまでに筆頭著者の英文原著論文として研究成果を報告したり、研究室スタッフの研究をサポートすることで論文著者に加わった学生もいます。畠山教授は、「若い人たちに、自分の名前が研究の歴史の一部に刻まれる喜びを体験してほしい」と語っています。

多くの医学生は、医学部を卒業すると2年間の初期研修を受け、その後3~5年間の後期研修や専門医研修を受けます。すべての研修を修了すると30代半ばになるため、博士号の取得を目指す場合は、どのタイミングで大学院に進学するかが重要になりますが、畠山教授は卒後教育を中断、あるいは遅らせてでも若いうちに研究に従事することには大きな意義があると言います。

「今は技術や情報の進歩が非常に早く、知識があっという間に古くなります。1~2年で最先端科学のパラダイムシフトが起きるので、5年後では気づいたときにはすでに手遅れということもあり得ます。博士号を取得すると就職先が狭まるという思われがちですが、近年は研究経験のある博士号を持った人材を必要とするグローバルな職種も増えています。医学の分野でもテーラーメイド医療が現実化しつつあり、分子生物学・分子遺伝学・バイオインフォマティクスの知識なしには高度な医療を遂行することができなくなるでしょう。そのためにも、できるだけ早い時期に博士課程に入学し、最先端の基礎医学の知識を身につけてほしいと思います」

研究者として確実にレベルアップするには、次世代シークエンサーや質量分析器などの高性能な機器や設備、他の研究機関や海外とのネットワーク、国家・国際レベルのプロジェクトへの参画実績など、時代の先端を行く研究環境が必須です。それらも含めたうえで自分のキャリアプランをしっかり見定め、研究に集中できるようセルフプロデュースすることが必要です。畠山教授は、医学部時代にはなかなか知る機会のない医学界の現状や研究の現場を体験してもらい、研究者の道に進む学生を一人でも多く増やしたいと考えています。

(平成28年2月現在)

未来の研究者に科学の面白さを伝えるアウトリーチ活動

医化学分野では、未来の研究者の育成に貢献するため、アウトリーチ活動にも積極的に協力しています。中学高校の生徒さんや小学生の児童さんを対象に、年齢に応じたやり方で、科学の面白さや重要さを伝えています。毎年数件、研究室のホームページを見た関係者から依頼があり、好評をいただいております。私たちの持っている最先端の科学情報を分かりやすい形で社会に還元し、多くの人に興味を抱いていただくことは、私たち研究者の使命と思っています。